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「...」
使用してすぐ、検査薬の真ん中の白い部分に、赤い縦線が二本現れた。
まさかとは思ったが、やはり私は妊娠していた...そのせいで、食欲旺盛になっていたのだろう。
『でも...』
ざっと計算してみて、思い当たる節は何度かある。帰省する前に一度、その後に一度...。
『つわり来るの早くない?』
そう心の中で呟きながら、妊娠検査薬をトイレットペーパーで綺麗に拭き、トイレから出て手を洗う。
そして、リビングに戻って椅子に座り、珠江さんと向き合う。
「どうだった?」
「...」
黙って検査薬を見せる。
「あら?良かったじゃない!」
「喜ぶべきなんでしょうけど...時期が時期なんで...」
「まぁそうよね」
「はい...」
「でも、ちゃんと誠一郎には伝えないとね?」
「はい!それはもちろんです」
ただ、タイミングをどうするか…。戻って言うか、今日言うか…。
「早い方がいいわよ?」
「はい」
とりあえず、戻ってからでも遅くは無いだろう。
「一応、戻ってから産婦人科に行ってきます」
「それが良いかもしれないわね」
「はい」
珠江さんはニコニコしながら言う。
「誠一郎の驚く顔が目に浮かぶわ」
「驚くでしょうね」
せいちゃんとする時は、だいたい避妊しているが、たまにしない時があり、そのたまにがここへ来る前で、ちょうど排卵期だったようだ。
もう何日か後のはずだったのだが、何故か早まってしまったらしい。
『伝えるのは、病院行ってからかな?』
とりあえず、珠江さんには黙ってて欲しいと言い、検査薬も大事に仕舞った。
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