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病
お父さんが亡くなって約半月、私のお腹もみるみる大きくなってきた。
時折、私のお腹を蹴る事があり、蹴られると「せいちゃんとの子がお腹にいるんだ…」と、実感が湧く。
今は、医学部に入るための勉強と、家事を何とかこなしながらせいちゃんとの甘い生活を送っている。
「ただいまー」
リビングで勉強していると、せいちゃんが玄関を開けて入って来、こちらに向かって声を掛けてきた。
「おかえりー」
言いながら、慌てて玄関へ向かう。
「今日はどうだった?」
「うん…なかなかに忙しかったよ…ルナは?」
「勉強は捗ってるし、お腹の子も元気よ!」
「なら良かった」
せいちゃんは、フゥと息を吐き、靴を脱いで廊下を歩き、そのままリビングのソファーに座った。
「ご飯どうする?」
「あんまり食欲無いけど…少し食べるよ」
「わかった!その前にお風呂行ってきて?」
「あ、うん!わかった!」
せいちゃんは、ゆっくり立ち上がってお風呂場へ向かった。
『お腹もこんなだし、そろそろ夜這いはやめた方がいいかな?』
なんてことを考えながら、作り置きしていたものを冷蔵庫から取り出してレンジに入れ、ご飯を小盛にして、温まったおかずをレンジから取り出す。
それにしても、最近せいちゃんの食欲が落ちている。不安に思い、何度か病院行ってみたら?と打診したが、「疲れのせいだろうから」と、行くのを拒んでいる。
『変な病気にかかって無ければ良いけど…』
フゥとため息をつきながら考える。
『それにしても…』
せいちゃんがなかなか戻って来ない…シャワーの音は微かに聞こえるが…。
私は意を決して、ゆっくり風呂場へ向かい、扉を開けた。
「せ…せいちゃん!!??」
せいちゃんは、シャワーを出しっぱなしにして床に倒れていた。
私はすぐに、せいちゃんの脈を測る…大丈夫!脈はある!
シャワーを止めて、せいちゃんが息をしているかの確認…息もある。
すぐさま救急車を呼び、私に出来ることをやる。これでも、一応医療系の勉強もしている。
だからあれだけ病院に…って言ったのに…救急車が、サイレンを鳴らしてうちに近づくのが聞こえてきた。
そしてインターホンが鳴り、急いで玄関の扉を開いて隊員を中に入れる。
その間に、私は珠江さんに連絡をして、せいちゃんと一緒に救急車に乗った。
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