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朝食を終え、部屋で少し休んでから予約してある乗馬クラブへと行く。
当たり前だけど乗馬クラブには馬が何頭もいてちょっとびっくりする。だって馬なんて間近で見ることないから、これが初めてだ。馬って大きいし、目は可愛いんだなぁと馬鹿な感想を思ったりもする。
ヘルメット、ベスト、ブーツを借り、身につける。指導員が常に傍にいるけど落ちて怪我したりしないようにベストとヘルメットが必要なようだ。馬が歩いているときや暴走してしまったときに怪我をしない為だろう。
馬を馬場に連れだして乗るだけでもうドキドキだった。そして指導員さんに傍にいて貰い、馬場をくるりと回る。
「うわーっ」
「大丈夫ですよ。ゆっくり歩いてくれますから」
馬が歩き出したことにびっくりしてわめいてしまうと指導員さんに声をかけられる。
ポックリポックリと馬は4拍子でゆっくりと歩いてくれるけれど意外と体が上下に動くし、馬の上できちんとした姿勢を保つことが意外と大変だ。
馬を蹴って進ませて、手綱を引いて止める。馬を蹴るのはそれなりに力を入れないと馬は気づかないというが、強すぎたらどうしようと思ってなかなかできない。一体何回蹴っただろうか。
やっと力加減が分かった頃に体験は終わってしまった。15分はあっという間だよな〜。
馬から降りて歩くのがなんだかがに股になってしまいそうで変な感じがする。明日、筋肉痛になったりしないだろうか。でも、楽しい15分間だった。
「楽しかったね」
「そうだな。もう少し乗ってたかったよな」
「でも、姿勢保つのが大変で筋肉痛になりそうだよ」
「明日どうなるかだな」
「帰るだけでよかったよ」
乗馬を終えた俺たちはホテルの地下1階にあるコンビニで飲み物だけを買い、部屋へと直行した。たった15分の体験乗馬だったけれど、何気に疲れたからだ。
「ワイナリーは午後ね。少し休みたい。せっかくのいい部屋だし、部屋でもゆっくりしないとね」
「確かにな」
部屋に入るとベッドにダイブする。座り心地のいいソファーがあるけれど、疲れた場合はベッドがいい。寝室のブラインドをあげればベッドからでも海が見える。
俺はベッドの真ん中に大の字で寝転がる。
「お疲れだな」
「何気に疲れた。立樹は大丈夫なの?」
「疲れたけど、寝転がるほどじゃないかな」
「なんか負けた気分……。でもワイナリーと神社は行くから!」
「あぁ、強運を得たいんだろ」
「そりゃそうだよ。立樹だってそうだろ」
「悠をゲットできただけで十分強運だと思ってるけどな」
そう言って立樹は柔らかく微笑み、俺の頭を撫でてくる。その顔は反則だよ、立樹くん! こんな立樹の表情は何度となく見ているけれど、それでも見るたびに恥ずかしくなってしまう。
立樹が俺をゲットできたことで強運だと言うのなら、俺はもっと強運だろう。誰にでもイケメンと言われて、結婚までしていたノンケなのに、なにがどうなったのかゲットできてしまったのだ。それを強運と言わずになんと言うのだ。
だけど、もっと強運を……と願うのは欲張りだろうか。でも、それなりに出世したいしな。だからもう少し運が欲しい。マンションも買ったしな。
「まぁお昼まで少し休もう。で、ランチに行って、そのまま出かけよう」
「うん。なんか横になったら眠くなってきた」
「眠いなら寝ていいよ。起こしてあげるから」
「うん……お願い」
そう言うと俺は眠りについた。
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