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少し仮眠し、立樹に起こして貰う。時計を見ると短い時間だけど、体はすっきりしている。深い眠りだったのかもしれない。
「ランチに行こう」
「うん」
ランチのイタリアンのお店は上階にあるのでエレベーターで上へと上がる。コース料理も出すその店は重厚感があった。今日はコースじゃないけど、ちょっと食べてみたい気もする。考えてみたらイタリアンのコース料理を食べたことがない。
「いらっしゃいませ」
そう言ってスタッフに通された席は運良く窓際の席だった。海がよく見える席だ。このホテルは海が近いため、至る所から海が見える。
「俺、カルボナーラ」
「じゃあ俺はペペロンチーノにするかな」
甘いものが得意でない立樹はパスタだとよくペペロンチーノにしている。間違えてもカルボナーラのようなものは頼まない。
「そういえば最近パスタ食べてなかったな」
以前は職場近くのイタリアンのお店に結構行っていたけど、最近は炒飯の美味しいラーメン屋によく行っている。
「ランチによく行ってるんじゃなかったのか」
「美味しい炒飯の店を見つけたって言っただろ。それからあまり行ってない」
「そうか。平日のランチに食べてると思って家で作ってなかったんだけど、今度作るよ」
「うん! 立樹はソースも手作りしてくれるから美味しいんだよな」
「悠はそう言ってくれるから作りがいがある」
「もし今日の美味しかったら再現してね」
「できたらね」
そう言って立樹の作る料理のことや平日のランチの話しをしているとパスタが運ばれてくる。美味しそう。
「「いただきます」」
そう言ってカルボナーラを一口くちにするとクリームのクリーミーさに粗挽き胡椒がピリっとしていて美味しい。
「立樹。このカルボナーラ美味しい!」
俺はランチのカルボナーラを一口食べて、思わず声を出してしまった。
「こっちのペペロンチーノも美味いよ」
「一口ちょうだい」
「じゃあ俺もカルボナーラ一口貰う」
「うん」
クリーミーなカルボナーラを食べていたからお水を飲んで口の中をリセットさせる。そして一口くちにするとにんにくと唐辛子のピリっとした味が口いっぱいにする。うん、美味しい。
「カルボナーラも美味いな。これなら再現できるかな?」
「わー。作って作って」
今、立樹が作ってくれているカルボナーラも美味しいけれど、もっと美味しくなるのは大歓迎だ。そして俺が外で美味しいと言うと立樹はできる限り再現してくれる。もちろん調味料とか食材の違いで完璧ではないけれど、そうでないものはかなりの率で再現させる。
立樹いわく、俺がいるから腕があがると言う。今まではそんなことはなかったらしい。唯奈さんと結婚していたときは料理をしなかったので唯奈さんは立樹の料理を食べたことがないと言う。立樹の作る料理はほんとに美味しいから可哀想だと思う反面、俺だけだと嬉しくもある。
パスタをペロリと平らげ、コーヒーで一息つく。
「地図ってあるの? 道大丈夫?」
「悠が寝てる間にコンシェルジュに地図貰ってきた」
立樹のエスコート力ってほんとスマートだよなと惚れ惚れする。同じ男だけど俺にはできない。
「じゃ、行こう」
「ああ」
そう言って午後のワイナリーに行くべく席を立った。
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