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「お前がどうにかできることじゃないだろ、むしろお前が危なかったじゃないか。なんで相談してくれないんだよ」
「言ったら絶対反対したでしょ? それより私も協力するから。とりあえず警察に電話しちゃって」
「ああ」
警察に電話をしようとして、ふと沙織にかけてもらって自分が直樹を見張っている方が良いのではないかと思った。
「なあ、さ――」
その瞬間腹に激痛が走る。
「え」
沙織がいきなり抱きついてきたと思ったら。刺された? 沙織に。何故、刺される理由などない。
「よかったつけてて。こんなチャンス二度とないもん。百万ゲット!」
その場に崩れ落ちる。出血がひどく一気に貧血状態となった。
「前ちらっと護身術やってるって聞いてたから、直接何かしたら絶対勝てないと思って。そこの馬鹿に掲示板の話したら食いついてくれたからやりやすかった」
あははと笑う沙織。じゃあ、今まで危険な目にあわせてきたのは全部……。
「ふざけんなよてめえ、俺が先だろうが!」
「はあ? 馬鹿じゃないの?」
沙織は隆介を見下ろした。かわいいと思っていた顔がまるで悪魔のようだ。
「依頼主ってね、あんたの例のストーカー。『友達』である私だったら絶対殺せるから五十万上乗せしてくれって言ったら、直接連絡してきたわ。死ねば受け取ってくれるだろうから、はやく殺してくれってさ。バーカ」
死ねば受け取ってくれる? 逆恨みではなくそっちかよ。そう考えてクッと笑う。
――確かに馬鹿だ。
こいつら以上に、自分の馬鹿さっぷりに呆れてしまう。なんでこんな奴らと交友関係を持ったんだろうと、遠のく意識の中ぼんやりと考える。頭のイカレた女をもっと徹底的に叩き潰していれば……。
「男なんてウジャウジャいるもん。金の方が大事に決まってるじゃん」
そう言うとケラケラと笑って沙織はナイフを思いっきり振り上げる。
――ああ、これで本当に俺は手紙を受け取る資格ができるわけか。受け取りたくもねぇけど
そんなことを考えながら、振り下ろされるナイフを見つめつつ意識が弾けた。
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