既知

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「藤堂さん…好きだよ。その気持ちに嘘は無い」 「……」 優しく私を抱き締めながら、そんな言葉を掛けてくれる副社長。 私も小さく頷いてみると、再びキスをして来た。 「藤堂さん……」 「はい…」 「さっき緋山くんが言っていた、立場や身分が釣り合わないとかって。藤堂さんも思ってる?」 「……少しだけ…」 また、小さく頷く。 副社長は溜息をつきながら、私の手を握った。 「そんなこと思わないで。…俺が良いって言っているんだから関係ない。もう絶対に気にしないこと」 「……」 「返事は?」 「……はい」 「よろしい」 涙が浮かび、少しだけ潤んでいる副社長の瞳。 少し苦しそうな表情をした彼は、私を抱き締めてそっと頭を撫でて囁いた。 「…抱きたい」 「え?」 「抱きたい……藤堂さん」 「……」 「実は最近、キスだけでは満足できなくなっている。藤堂さんが…欲しい」 「…副社長…」 私の頬を掴み、キスをする。 副社長から漏れた熱い吐息に、身体が疼いた。 「藤堂さん………良いかな。…貴女を、抱きたい」 私の片想いだと思っていたのに。 副社長はいつの間に私のこと、こんなに好きになってくれていたのだろう。 そう思うも、答えは本人しか分からない。 「………」 ずっと…ずっと密かに期待していた展開。 夢のような副社長の言葉に、もう私自身の高揚も抑えられない。 「…お願いします」 そう返答すると、副社長は満面の笑みを浮かべて、力強く私を抱き締めた。
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