異動辞令

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「本日付けで異動して参りました、藤堂茉佑と申します。宜しくお願い致します」 「こちらこそ、宜しく。藤堂さん」 野依製造株式会社の副社長、野依(のより)直哉(なおや)。34歳。 御曹司でスタイルが良くて、頭も良い。 社内外問わず信頼も厚く、何でも簡単に処理をする超ハイスペック。 それなのに。 秘書だけは、誰1人として長くは続かない。 しかも辞めていく秘書たちはその理由を一切話さない。 野依副社長が格好良すぎて秘書が耐えられない、という謎な理由が社内で飛び交っていたりするが……。 何故秘書たちが辞めていくのか、本当の理由は誰も知らない。 「藤堂さんの席はそこ。部屋の入口付近で煩わしいかもしれないけれど、ごめんね」 「あ、いえ。分かりました。荷物、運ばせて頂きます」 「うん、どうぞ」 副社長室の外に置いてある私の荷物。 それらを中に入れるのに、副社長も少しだけ手伝ってくれた。 「……」 野依副社長については、当然だけど入社した時から知っている。 社員に対しても優しくて気が使える人。 そのイメージは、何も間違っていないようだ。 ……だったら、秘書はなぜ辞めていくのか。 その答えは、意外とすぐに現れた。
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