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「副社長、ごみ捨てに行って参ります」 「了解。よろしくね」 この階にあるごみ箱からごみを回収して袋に詰め、社屋の裏にあるごみ捨て場まで持って行く。 週に2回、これも秘書としての仕事だ。 あれから、緋山さんは副社長室に現れなくなった。 副社長に言われたことに懲りて諦めてくれたなら良いんだけど…。 「お疲れ様です」 「お疲れ様~」 ごみ捨て場に立っている女性パート従業員さん。 いつもニコニコとしておられ、心なしか元気が貰える。 「今日も良い天気やねぇ!」 「そうですね。今週はずっと良いお天気みたいです」 他愛のない話をしながらごみを置き、来た道を戻ろうとUターンをする。 すると少し先に、こちらに向かって歩いている緋山さんの姿が見えた。 「…うわ」 思わず体が強張り、ごみ捨て場の方をまた向く。 そんな私の様子に気付いた緋山さんは、走って向かってきた。 「藤堂秘書! お疲れ様です!!」 「ひ、緋山さん…」 緋山さんもパート従業員さんに挨拶をしてごみを捨て、しれっと私の肩に触れる。 「や、止めて下さい」 「スキンシップです」 「望んでいません」 冷たい言葉を投げ掛けながら、緋山さんの手を振り落とす。 パート従業員さんは、そんな私たちの様子を微笑みながら眺めていた。 「若いわね、あなた達」 その一言にまた緋山さんの表情に喜びの感情が見え始める。 「僕たち、お似合いですよね」 「え!?」 また私の肩に触れ、パート従業員さんにそう言う緋山さん。 「お似合いよ。若い者同士、仲良くね」 「え、ちょ……」 要らぬ誤解を生んだような気がして、また緋山さんの手を振り落とす。 「止めて下さい」 ニコニコと微笑んだまま、また肩に触れる。 「はぁ……」 どうすれば良いのか分からない。 こんなの、エンドレスじゃない……。
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