生きるのは命懸け

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「敵との距離が50メートルを切りました。体温偽装装置を作動させてください。私も同じく低温モードに切り替えます」  僕がスーツのボタンを押すと全身が冷たくなる。この感覚は慣れないな。  しばらく息を殺して待ち受けていると、ニコラの情報通り二匹の浮遊クラゲがぷかぷかと浮かびながら、不気味に発光している。触手で何かを探しながら。 「私が先に低温モードを解除して囮になります。その間に射撃をお願いします」  僕は頷くと手に持った電気銃を握りしめる。手汗で滑らないように、両手で支えながら。  ニコラは立ち上がると、落ち着いて浮遊クラゲに向かって歩いて行く。向こうが熱源を察知したのか、触手の動きが早くなる。そして、次の瞬間、触手が剣のように真っ直ぐになり、鋭利な刃先でニコラを攻撃する。しかし、それと同時にシールドを展開していたニコラは無傷だった。どうやら、触手は熱源の探知と攻撃の役割を担っているらしい。僕の知っているクラゲの触手とはだいぶ違う。  いつまでも観察している場合ではない。ニコラにも稼働時間の限界がある。エネルギーを補充できるのは船内だけだから。僕はしゃがんで狙いをつけると電気銃の引き金を引く。浮遊クラゲの触手に命中したが、効果はみられない。こちらの存在がバレたのか、一匹がこちらに向かって来る!  慌てるな、落ち着いて対処だ。先ほどの攻撃からするに、触手は弱点ではないらしい。じゃあ、あの不気味な発光器官か? しかし、触手を避けて当てる技術は僕にはない。いや、僕になくてもニコラにはある。 「ニコラ、これを使って! ドローンにくくりつけて、発光部の攻撃を!」  地面に電気銃を滑らせると、ニコラが空いている右腕でキャッチする。すぐさま左腕のドローンに装着すると、空中に浮かべる。ドローンはニコラの制御で触手を潜り抜けると、発光部位に電撃を浴びせる。予想通り、浮遊クラゲは地面に倒れる。よし、もう一匹もやれる! ドローンがもう一匹に迫った時、急に浮遊クラゲが飛び上がると、独特の発光液体を撒き散らしながら、破裂する。
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