姿なきハンター

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 海中を進むと見えて来たビル群はどこか懐かしさを感じる。それは久しぶりに人工物を見たからかもしれない。ビルは水圧や海水の侵食でコンクリートが壊れて、剥き出しの鉄骨が錆びついている。無機質で生命の存在は感じられない。  一方で、ビルの物陰は小型の魚には絶好の隠れ家らしい。ビルに付着したサンゴの周りを魚の群れが泳いでいる。僕が通ると危険を察知したのか、散って逃げていく。  太陽の光が届かないくらい深く潜ると、静けさと孤独感が襲って来た。大丈夫、僕にはニコラがいる。  ニコラが再び手元の索敵ドローンを射出すると、ボコっと泡が出て静けさを破る。たまに聞こえるこの音がなければ、僕は孤独のあまり狂っていたかもしれない。 「索敵完了。敵は見当たりません」 「よし、いよいよ航空基地の中だ。油断大敵、気を引き締めていこう」
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