海中の試練

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海中の試練

 頭上のサメは僕たちの存在には気づいていないらしい。近くの魚に噛み付くと、辺り一面に鮮血が広がる。狭まった視界をなんとかしようと手で散らそうとした時、ゴツンと音を立てて派手にコンクリートにぶつける。  音でこちらに気づいたらしい巨大なサメが鋭く血で染まった歯を剥き出しにして襲いくる! ニコラがチューブを手繰り寄せてなんとか危機を脱出した。 「パーツは手に入ったから、早く上に戻ろう!」 「かしこまりました」  ニコラが海上目指して進もうとするが、何かがおかしい。よくチューブを見ると、ビルの窓のフレームに引っかかっている! これでは、僕たちはサメの餌となってしまう。このチューブはダイヤモンド並みで簡単には切れない。パワードスーツから切り離すことはできるけど、ニコラのサポートなしでは浮上できない。 「ニコラ、ドローンだ! ドローンで誘導するんだ! 僕が隙を見てサメの目にこいつを突き刺す!」  僕は手元に腐食した鉄筋を持ちつつ指示する。「かしこまりました」とニコラは言うと、腕からドローンを射出する。サメは頭周りを飛びまわるドローンが邪魔なのか、噛み砕こうと大きく口を開けるが、空振りに終わる。徐々にこちらに近づいてくるサメの目に標準を合わせると一気に鉄筋を突き刺す。 「今のうちに浮上だ!」  ニコラが窓枠に絡まったチューブを解くと僕たちは一気に上へ上へと泳いでいく。
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