海に沈んだニューヨーク

2/3

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「ねえ、ローラン」 「なんでしょうか」 「やけに静かじゃないか? そりゃあ、今のところ、生物といえば僕だけしかいないけど」  潜水服を作る作業を止めてみる。静寂の支配する世界。聞こえるものはそよ風の音くらいだ。 「レオン、水陸が逆転したのです、生態系が変わったのでしょう。まずは大型哺乳類は滅びたと考えるべきです。しかし、好都合です。ライオンに襲われずにすみますから」  哺乳類の絶滅か。人類もそうかもしれない。この広大な大地を独り占めか。嬉しいような悲しいような。 「ローラン、一つ質問してもいい?」 「なんでしょうか」 「僕以外に生物がいないとしよう。少なくとも陸上には。そうするとだ、僕は何を食べて生きればいいの?」 「宇宙船にある食料になります」  なんだか嫌な予感がする。しかし、聞くしかない。 「それって、何日分あるの?」   「……」  どうやら、そう多くはないらしい。今までは他の惑星で補給してきたけれど、荒れ果てた地球では期待できそうにもない。潜水服の作成と同時に食料探しも必要だ。人間はお互いに支えあって生きてきたんだなとしみじみと感じる。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加