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「あぁごめん! ごめん! えっと……黒木ちゃんと一緒に、今日からうちでインターンするそのお友達は、自分から黒蝶を希望したの?」
「えっ? あぁ! 本当は、晴海編集部を希望していたんですけど、晴海内でトラブルがあったみたいで、急きょ、欠員が出た黒蝶でインターンをすることになったんです。あの? 澤井先輩? 私の勘違いならすみません。やっぱり、さっきからなんか様子がおかしいですねよ?」
「そう? なにも変わらないと思うけど?」
黒木の言葉に、明らかに動揺する澤井。
そんな澤井に、さらに黒木は、言葉を続ける。
「澤井先輩? 私、大学を卒業したら、編集者として出版社で働きたいと思っているんです。けど、卒業後の明確なビジョンがある友人とは違って、自分には、明確なビジョンがなくて、ただ、漫画が好き、小説が好き。ただそれだけなのです」
黒木は、小さい頃から、漫画や小説、写真、映画が好き、それ以上に、文章を書くのが好きだった。
だから、将来は、物書きか、雑誌の編集者になりたいと思った。
だからこそ、常にアンテナを張り、流行には乗り遅れない様にしていた。
なので、人間観察と情報収集力に関しては、他の人より少しだけ勝っていると思う。
勿論、自分より、すごい人はもっといると思うが、自分の周りでは、無敵だと思う。
「だからこそ、私は、雑誌を読む読者に、自分の好きな物を好きになって欲しいです」
「……黒木ちゃん?」
唐揚げを一個取り、一口食べる。
「なんて、プロの澤井先輩から見たら、呆れた動機ですよね?」
「そんなことないよ! わたしの志望動機なんて、アニメ化だよ! それも、ここみに配属されるかもわからないのに、私の将来の夢は、自分が担当した連載漫画をアニメ化することですって、面接官の前で宣言しちゃったんだよ?」
まぁ? そのおかげなのか、新人研修を終えた澤井は、文芸雑誌「ここみ」に配属され、今は、夢だった少女漫画の編集者として働いている。
「けど、今は、その時の夢を叶えて、漫画編集者になっているじゃあないですか! それに比べて、私は、明確なビジョンもないし……」
「黒木ちゃん?」
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