君が戻ってくるその日まで

2/2

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「でもまさか、若瀬先生がこんなイケメン方だとは思いませんでした!」  堂城誠也との電話を終え、テーブルに戻ってきた小泉璃菜は、いつの間にかやってきていた若瀬怜音こと鳴海坂昴姿に興奮する。 「あぁははイケメンですか? そんなことはじめて言われましたよ」 「えっ! 本当ですか? もしここに胡桃……あぁ」 「どうかされましたか?」  急に言葉を切り上げた小泉に、昴が心配そうに声を声をかける、 「いえ? 今日、本当は、ここには私じゃあなくて、黒木胡桃と言う、女性編集者が来るはずだったんです」 「あぁ! 自分に、なんでも取材の電話を掛けて下った方ですよね?」 「はい! 胡桃は、若瀬先生の大ファンで、今日の単独取材も前から凄く楽しみしてたんですけど、この頃、仕事が忙しかったので、風邪を引いてしまったみたいで昨日から会社を欠勤してるんです」  本当は、違う。  けど、その事を取材対象者に言う必要はない。 「解ります。僕も花屋と作家の二刀流なので、普通の人より、二倍の体力と気力を消費するので。あぁ! そうだ!」  昴は、カバンの中から一冊の本を取り出すと、その本を小泉に手渡す。 「黒木さんのお見舞いによかったらどうぞ」 「ありがとうございます」  昴から手渡された本を受け取る小泉。 「えっ?」  昴から、受け取った本には、若瀬怜音の名前が書かれてあるだけで、タイトルが書かれていなかった。 「あの……わか」 「小泉さんは、葉牡丹の花言葉を知っていますか?」 「えっ? あぁえっと……葉牡丹の花ことですよね? えっと……渋谷ちゃん判る?」  隣に座る渋谷に助けを求める。 「えっ? えっと……葉牡丹ですよね? えっと……すみません! 解らないんです」  一瞬、考える素振りを見せたがすぐに降参する。 「若瀬先生すみません。答えを教えて貰ってもいいですか?」 「葉牡丹の花言葉は、祝福:愛を包む:物事に動じない:利益です。小泉さん。いま、あなた渡したその本には、最初からタイトルはありません。でも、もし、タイトルを付けるとしたら、きみがここに戻ってくるその日まででしょか?」 「きみがここに戻ってくるその日まで」    
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加