日常

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 雫丘出版地下駐車場 休憩スペース  「黒木先輩? 遅いな?」  駐車場の休憩場スペースで、小泉璃菜は、左腕の腕時計で、現在の時間を確認しないが、黒木胡桃が来るのも待っている。  20分前、作家の若瀬怜音の取材に行く為、先輩の黒木胡桃さんと一緒に取材先に行こうとしたら、堂城誠也副編集長にいきなり、黒木先輩が呼び出されてしまった。  そして、先輩が副編集長から呼び出されて20分、未だに連絡の一つすらない。  そろそろ、若瀬怜音先生が、指定してきた取材先である「カラオケ屋パンダ」に向かわないと約束の時間である11時に間に合わない。 「ってか? なんで堂城副編集長もこんな時に限って、先輩のことを呼び出したりするの! 副編集長のせいで、遅れるとかマジありえないし」  小泉は、自分達がを取材に行くタイミングで、黒木の引き留めた堂城に対して、怒りを爆発させる。 ★ 「ハァハァ……ごめん璃菜ちゃん。副編集長との時間が思いのほか長引いちゃって」  小泉の怒りが頂点に達し、取材開始時間まで残り15分になった頃、ようやく、彼女の待つ地下駐車場に、胡桃が息をあげながら駆け込んできた。  但し、おまけを連れて。 「黒木先輩! 大丈夫です……って? 渋谷さん?」  小泉は、呼吸困難になっている胡桃に元に掛け寄り、彼女に大丈夫ですかと声を掛けようとしたら、彼女のすぐ後ろに、渋谷咲がいることが気づき、思わず大きな声で「渋谷咲さん」と名前を呼んでしまった。 「あぁお疲れ様です」 「はははぁあ瑠璃ちゃん。ゴメン。悪いんだけど、若瀬怜音の取材には、私じゃあなくて、渋谷さんと一緒に行ってくれる。私、今から浜中商事に、謝罪に行ってくるから」 「えっ?」  突然の出来事に、小泉は、動揺は隠さない。 「じゃあ、渋谷さん。あとのことは、瑠璃ちゃんに教えて貰ってねぇ?」 「わかりました」 「じゃあ、二人、取材、気を付けて行ってきてね?」 そう言うと、胡桃は、それ以上は何も告げずに、独り社用車に乗り込み駐車場から出て行った。 ★
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