政宗side新居の下見※

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政宗side新居の下見※

 結局葵が襲われたあの事件がきっかけで、俺と葵は入籍を済ませて一緒に住む事に決めた。安全を考えてあの高層マンションとは別の、葵のカフェに近い中層のマンションに新居を構える事にした。  コンシェルジュと警備員が在駐するこの建物は、葵が眉を顰めるほどパッと見も物々しかったが、広いルーフバルコニーを見た葵は直ぐに機嫌を直した。  目の前が公用地なので高層ビルも無く、プライバシーも守られる。中々空きが出ない好物件だったが、義父である如月社長が伝手を使ってくれた。  「ね、政宗見て!ここでガーデニングしようかな。日当たりも良いしね?ウッドテーブル置いて休日にここで食べても良いね?」  楽しそうにあちこち覗き込む葵に、俺は只々頬を緩めた。葵が楽しそうにしているのを見てるだけで、心が浮き立ってくる。葵が描く二人の生活が今や目の前に差し出されているんだ。 「じゃあ、インテリアデザイナーに希望を言って整えてもらおう。俺は葵の部屋のインテリアもリラックス出来るから、特に注文はないよ。ああ、ベッドは一番大きいやつで…。それは外せない、だろ?」  そう、腰に手を回して囁くと、葵は悪戯っぽい切長の瞳を光らせて言った。 「…あまり広いとくっつけないんじゃない?ふふ、でも広くないと出来るアレが限られちゃうか…。」  そんな仄めかしを受けて、俺は葵の丸い尻を掴んだ。 「まったく、直ぐに煽ってくる。…今夜はお仕置き決定だな?それより入籍日は早ければ早い方が良いって言ってたけど、何か理由でもあるのか?」  すると手を伸ばして俺の両肩に手をかけた葵は、クスクス笑って首を傾げた。 「分からない?本当に?」  以前の様に襟足を短くするのを止めたのか、最近の葵は柔らかなウェイブの掛かった明るい髪を全体に伸ばしている。何でも俺が短いから反対に伸ばすのだそうだ。  理屈は良く分からないけれど、葵は揺れる髪も良く似合うのは確かだ。俺は秘密めいた眼差しの本意を探ろうとじっと瞳を覗き込んだ。明るい榛色に囲まれた黒い瞳孔が開いて、それから瞼が閉じて見えなくなった。  「まったく、鈍感なんだから。多分10日以内に発情期が来ると思うから、急いだ方が良いかなって思っただけ。…それともまだ噛まない?」  俺は腰を掴んでいた手で葵を持ち上げていた。 「噛むに決まってる!明日入籍しよう!そうと決まったら、この部屋が間に合うか分からないだろう?俺か葵のマンションにこれから毎日帰ろう。ああ、待ちきれないよ。」  そんな俺に軽く唇を押しつけて、葵はクスクス笑って言った。 「でもちょっと恥ずかしいかも…。政宗が引いたらどうしよう。」  腕の中に抱えられた葵は、馬鹿可愛かった。いつも余裕のある葵だけど、時々こんな風に自信なげになる。そんなギャップ萌えに俺はいつもやられっぱなしなんだ。 「引くほど凄いの?多分俺も野獣になるよ?二人でそうなるんなら、恥ずかしくないでしょ?」  葵は蕩ける様な笑みを見せて俺に甘く口づけた。すっかり慣れたその甘い唇と欲望のフェロモンに、いつだって俺はやりすぎない様に理性を総動員する羽目になる。  蜂を誘う甘い蜜の様に、葵は俺を惹きつけて離さない。誘う様に舌を触れ合わせる葵は、もっともっと欲しくなる甘い味を俺に差し出して、お互いに熱くなるのに止められない。  すっかり昂ってしまった俺は、理性を掻き集めて身体を引き剥がした。 「…こんな何もない部屋で盛ったら不味いだろう?」  欲求不満の身体がピリピリするせいで、不自然な動きになって誤魔化しきれない。葵は色っぽい眼差しでクスクス笑って、チラリと俺の身体を眺めて楽しげに言った。 「そうだね、せめて私の膝の下に敷くシャツが欲しいかな?それがあればその子を可愛がってあげるよ。」  そう誘惑されたら、俺は無言でTシャツの上に羽織っていたシャツを脱いで葵に渡した。  シャツを手にした葵は、キョロキョロと周囲を見回すとガランとした部屋の隅に俺を引っ張って行って、壁に俺を押しつけて焦らす様にズボンを脱がせた。期待で張り詰めた股間がぶるんと飛び出すと、嬉しげに葵は床にシャツを放り出してその上に膝立ちになった。  葵は凝視する俺と時々目を合わせながら、手と口で俺を(ねぶ)った。しっとりした少し冷たい葵の指先で、俺の先走りが塗り広げられて弱い部分を丁寧になぞられると、腰がその先を強請って揺れてしまう。  葵の柔らかな口の中に挿れられると、もっと奥へ突き入れて涙目になる葵が見たくなるのは俺の知らなかった一面だ。とは言え苦しませたくはない俺は、俺の腿にしがみつく葵の誘導に乗って、ゆっくりと腰を突き出した。  葵も顔を赤らめて甘く呻いて興奮してるのを見下ろしながら、俺は髪や耳を撫でて、責め立てられる刺激から息を抜いた。ああ、葵は健気でいやらしい。葵は俺だけのオメガだ。  その独占欲は俺を一気に興奮させて、葵の動きに任せて射精感を引き寄せた。 「葵っ、出るっ…!」  ビュクビュクと痺れる様な開放を感じながら、それに合わせて葵が全てを吸い上げる勢いで俺の白濁を溢さずに呑み込んだ。無理はしてほしくないけれど、葵はいつも美味しそうにそうしてくれる。 「…悪い、こんなとこで盛って。」  微笑んだ葵は俺が服を直している間にキッチンで手を洗うと、指先で唇を拭ってハンカチで手を拭いた。 「私も可愛がりたくて我慢できなかったから。ふふ、ご馳走様?」  とは言え葵も興奮してるのが見えて、俺は手を伸ばしたけれど、葵はスルリと俺から逃れて言った。 「私は貪欲だから、もっと沢山欲しいの。…早くマンションに帰ろう?もう下見は終わりでしょ?」  俺はニヤリと笑みを浮かべて、葵との結婚は人生で一番の選択だと疑いようもないと思った。この欲望に素直で、俺より大人で思いやり深い綺麗な男、馬鹿みたいに甘え上手なオメガを番に出来る幸運を只々噛み締めていた。 「ああ。俺も良い匂いを撒きちらしてる婚約者を可愛がってあげたくて堪らないよ。お礼はちゃんとするタチだからね、俺は。」
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