政宗side政略結婚のススメ※ 【完】

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政宗side政略結婚のススメ※ 【完】

 流石に一週間も籠っていた後では、身体も軋む気がする。先週帰宅早々、俺たちのベッドの上にせっせと俺の洋服や持ち物を集めて巣作りしている葵を見て以来の出社だった。  あの時の俺の顔を見た瞬間の恥ずかしさと喜びの入り混じった葵の表情は、今でも俺の股間を痛くする。…バカ可愛いんだ。  いつも穏やかで落ち着いていて、ある種強さを感じる葵だからこそ、ちょっと心細気なあの感じは俺の庇護欲を刺激する。発情期が終わったばかりと言うのに、葵の事ばかり思い起こしてしまう自分の変化に信じられない気がした。  「おい、その締まりのない顔をどうにかしろ。締まらないのは結婚してずっとだけどな、発情期の後はマジで酷いからな。切り替えろよ?今度の決算が終わったら社長就任だぞ?」  目の前に立った戌井に注意されて、俺は咳払いして誤魔化した。…そんな顔してたか? 「悪い…。一週間休んで悪かったな。何か問題無かったか?」  戌井は苦笑して俺にエスプレッソを渡すと自分の席に戻った。 「週末に送ったデータはチェックしてくれたろ?まぁ、どうせ使い物にならないと思って政宗のチェックが必要な最低限のものだけ送ったがな。まぁ、俺がいる分には発情期で休むくらい大丈夫だ。  しかしアルファが番を持つのって、お前を見てると恐怖さえ感じるな。そんな風に自分をコントロール出来なくなるのは、俺は無理だ。」  現実主義者の戌井は、俺と一緒で運命の番を笑い飛ばしてきた仲間だし、そう言う気持ちになるのは理解できた。でも俺は葵に出会ってから、恋をして番って、運命を実感している。  それは経験の無いものにはいくら言葉を尽くしても、今だけ溺れているだけに見えるかもしれない。俺にも説明できないが確信めいたは、感覚めいたものだからこそ都市伝説なのだろう。  「俺と葵は政略結婚だったけど、運が良かったんだ。まさか最愛の人を得ることが出来るなんて一年前は思いもしなかったからな。話を持ち込んだ誉さんが俺たちのキューピットって事になるとすれば、一生あの人には頭が上がらないよ。」  俺がそう言うと、戌井はPC画面を見ながらニヤリと笑った。 「確かにな。それにしてもあの人を知れば知るほど、如月家がこの短期間で急成長したのに納得するよ。俺なんかまだまだだってな。でも如月家の血が入ってる葵さんも、やっぱり何となく掴みどころが無いよ、俺には。」    目の前でレモン色のシルクのシャツを着て、細くも色っぽい腰にガーデンエプロンをつけて植木の手入れをしている葵をガーデンソファに座って眺めながら、俺は戌井としたそんな話を葵にしていた。  葵はクスクスと笑って、俺の方を向いて言った。 「掴みどころが無い?でも確かによくそう言われてたかも知れない。それは私があまり周囲に関心がなかったせいかも知れないけどね?もちろん今は昔より興味深々だよ?  兄さんはね…。父さんが立ち上げた会社だけど、急成長したのは兄さんが高校生ぐらいの時に口出し始めた頃からだからね。ちょっと私から見ても化け物感があるよね。」  俺はエプロンを外して、ルーフバルコニーの水場で手を洗い終わった葵が近づいて来るのを見つめながらじっと機会を窺っていた。手の届く所まで来ると、引き寄せて寝転がっていた自分のガーデンソファに引っ張り込んだ。 「わ!…政宗危ないでしょ?」  そう笑いを含んだ様子で俺を咎めるけれど、その甘い唇を誘うように近づける。重なる唇の柔らかさを楽しむと、葵は顔をそっと離して悪戯っぽい眼差しで言った。  「でも兄さんが政宗を選んだのはどうしてなのかな。多分提携先を探せば幾らでもあっただろうと思うの。兄さんが政宗を買っているのは勿論だけどね?  でも西園寺グループが資本提携を望んでいなかったら、年上のオメガである私なんて見向きもしなかったんじゃない?そう考えると運命のイタズラな気がしちゃうね。」 そう言われて、俺は目を見開いた。ああ、確かに俺の家が資金不足で苦境に陥っていなければ、この年で結婚自体考えもしなかっただろう。俺は小さく息を吐き出すと、眉を顰めた。  「…もしかして葵が別の相手と番っていた可能性もあるって事か?」 すると機嫌が悪くなった俺をあやす様に微笑むと、葵は俺の頬を撫でて言った。 「…政宗ほど相性の良い相手が見つかるなんて思えないけどね?私、そこは譲れないよ?それとも如月家の札束で端から並ぶアルファを叩いていけば、政宗に辿り着いたのかな。 政宗だったらあっという間に西園寺グループを建て直して、並んでる列からいなくなっちゃうよね?私、運が良かったみたい。 …ねぇ、それより喉乾いたんだけど?」  俺は二人を引き合わせてくれた運命に内心感謝しながら、葵の可愛い要求にニヤリと笑って、手元のグラスの中の炭酸水を一気に口に含むと葵に口移しで何度か飲ませた。勿論その後口の中も優しく愛撫するおまけ付きだ。  葵の甘い香りに包まれながら、俺はひんやりした細い指先が首元や耳の後ろを撫でるのを楽しんだ。 「美味しかった。…でも乾いてるのは喉だけじゃ無いみたい。濡れたこのお口で乾いた私を濡らしてくれる?」  俺に跨りながら指先で俺の唇をゆっくりなぞる葵は無意識なのか、作為的なのか今でも判断が出来ない。ゾクゾクする様な伏し目で俺を見下ろす葵の色気に、俺は簡単に陥落してしまう。そう、俺はいつだって喜び勇んで葵に尻尾を振るんだ。  シルクのシャツから浮き出たすっかり硬い胸の尖りを服越しに唇で引っ張ると、甘い小さな声をあげて葵は目を虚にする。その欲望に染まっていく眼差しが俺は堪らなく好きだ。  軽く歯を立てて擦ると、ビクビクと腰も揺らめく。最近お気に入りのピタリとしたヨガパンツ越しに両手で尻たぶを掴んで割り拡げると、期待する様な甘い呻き声をあげる。  「葵、声聞こえちゃうぞ?」 ハッとしてここがルーフバルコニーだと気がついた葵が立ち上がるのを阻止して、俺はテキパキと葵のヨガパンツと下着を放り出した。丸まって転がるそれを見送って苦笑する葵の太腿に、俺は自分の準備万端なそれを取り出して押し付けた。 「やる気満々だね?もうこの子濡らしちゃって。」 満更でも無いその蜜を舐めた様な顔を見てほくそ笑みながら、俺は葵に甘えた。 「膝立ちして?それともさっきしたばかりだから準備いらないかな?こっちは完璧な状況だけど。」  すると葵はペロリと自分の唇を舐めて俺のそれを後ろ手に掴むと、ゆっくりと小さく揺れながら呑み込んでいった。 「…ぁあ、声我慢できないかも…。」 葵は唇を噛み締めながら、自分でゆっくりと動き出した。そのもどかしい動きは俺を欲求不満にしつつ、じわじわと高みに連れ出した。眉を顰めながら、自分の快感を追いかける葵の姿が美しくも淫靡で、俺は我慢出来ずに葵の腰を持って一気に腰を突き立てた。 息を呑んで目を見開いた、葵の緑がかった茶色のはしばみ色の瞳を見つめながら、俺は二人の絶頂を目指して葵を揺さぶった。葵の瞳がぼんやりと焦点が合わなくなって俺を掴む指が肩に食い込む頃、俺の腹を濡らしながら葵は絶頂に喘いだ。  追いかける様に人形めいた葵を突き上げながら、俺もまた弾け飛んだ。何度か筋肉がびくついた後、デッキソファにぐったりと転がりながら、俺は脱力した葵を抱きしめてバルコニーから見える遠くのビル群を眺めた。 「お隣に聞こえたな…。葵のえっちな声。」 俺の肩に頬をつけて寄りかかっている葵は、笑いを含んだ声で答えた。 「ばか。政宗だって、最後に吠えたでしょう?ううって…。ふふ、ふふふ。」 俺たちは引き合う様に顔を合わせて、唇を軽く触れ合わせた。ああ、最高の休日だ。            【 完 】  年上のエロいオメガ最強説を掲げて、最後まで毎日更新出来たのが本当に嬉しいです😆 17万字、23話にて完結しましたので、とかく長編になりがちな私にしては頑張りました‼️ 葵はほんとエロくて大人で最高です。相手が西園寺じゃなくても大丈夫だったんじゃないかなんて話にもなりそうですが、あの若いひたむきな感じが相性ぴったりだったのではと思います。 二人のイチャイチャは楽しく書けました。受けがリードする方が書いてて楽しいですね🤣 思いがけず最初から沢山の方に読んで頂けて、毎日更新のモチベーションも続きました。他サイトでは日間ランキング1位も取れて、多くの方にエロい年上オメガ最強説を布教出来て嬉しい限りです😊 最後まで毎日お付き合い下さいましてありがとうございました❣️ ★なお、不定期更新ですが【竜の国の人間様】の連載は変わらず続けます。休止中の作品も完結目指すつもりです。スミマセン 新作については3~4個題名を思いついてますので、それを練り練りして形になればまた皆さんに公開出来ると思いますので、その際はよろしくお願いします🤲  
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