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翌日、僕は昨日のことは、悪い夢だったのだと考えた。そもそも、死神が律儀に余命宣告するのも変だ。いきなり殺すはずだ。そう考えると、気が楽になった。
「行ってきまーす」僕は母に言う。
「いってらっしゃい。最近、交通事故が増えてるみたいだから、気をつけるのよ!」
「分かってるって!」
僕はそう言うと、門戸を開けて外に出る。
運が悪い。もうすぐ車道というところで、信号が点滅しだした。しかたない、次に青になるのを待とう。いくら車どおりがなくても、自分の良心が「赤信号は渡るな」と語りかけてくる。ぼけーっとしていると、子供たちがワイワイしながら、こっちに向かってくる。そして、子供たちが赤信号なのに道路を渡ろうとしている!
「おい、赤信号だぞ。危ないぞ」
僕がそう言うと、子供たちの反応は三者三葉だった。
「えー」
「無視しちゃえ」
「青信号になるのを待とうよ。このおじさんの言うとおりだよ」
おじさん? 僕はまだ、大学生なのに。ショックを受けていると、子供たちは道路を渡るのをやめていた。彼らには、まだ良心があったらしい。
その時、交差点を軽トラックが曲がってくる。大丈夫、三人とも僕の注意で赤信号を渡っていない。僕はほっとした。
次の瞬間、風がビューっと吹き荒れ、子供の帽子が吹き飛ばされる。
「あっ」
子供が帽子を追って車道に飛び出した! 僕の体は本能的に動いていた。子供を突き飛ばした瞬間、軽トラックが僕を跳ね飛ば……。
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