律儀な死神

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律儀な死神

 ある夜のことだった。僕の枕元に変な恰好をした人物がいた。黒いマントに大きな鎌を持っている。鎌? 殺人鬼だ! 逃げなきゃ! でも、体が動かない。その時だった。 「お前の寿命はあと一年だ」そいつは言った。  僕は思った。お前に今、殺されるのだから、何かの聞き間違いだろうと。あと一秒の間違いだろう。鎌を振り下ろされるのが怖くて思わず目を閉じる。しかし、一向に痛みは来ない。死ぬ時って、いつの間にか死んでいて、苦痛はないのだそうか?  疑問に思い勇気をもって目を開けると、まだ、そいつはいた。 「おい、同じことを言わせるな。お前の寿命はあと一年だ。いいか、死神の俺が言うんだから、間違いない」  夢でも見ているのか? 今、死神っていうワードが出た気がする。 「死神……?」 「そう死神だ。これは夢ではない」  あと一年で死ぬ――これは余命宣告だ。あと一年しかない? それともまだ一年ある?   そんなふうに考えていると、死神は感心したように言った。 「お前は変わっているな。今まで余命宣告された者は、大抵発狂したのだが」  確かに、と自分で思う。でも、急な話でまだ実感が湧いていないのかもしれない。 「なんにせよ、あと一年、せいぜい足掻くがいい」死神はそう言って嘲ると、去っていった。
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