夜を噛ム

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「お父さん」 女は近づくと、男に向かって勢いよく肩を組んだ。 驚いた顔で、男が顔を上げる。 白髪混じりの少し長めの髪に、煙草の匂いが染みついた身体。 だがその瞳は以前に比べて、光を宿していた。 ヤドナシは昔と同じように、ニヤリと笑う。 「よぉ、アリス」 2人は、お互いを抱きしめ合った。 それは再会の感動か、娘として拾ってくれた父への感謝か。 何も言わずにアリスは、伝えたい言葉とヤドナシへの気持ちを噛み締めた。 夜は続く。 だが星々のように人々は、この町で輝いていた。
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