バードミサイル

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「9回裏、ツーアウトランナー1塁。カウントスリーボールツーストライク。スコアは0対0。ここまで見事な投げ合い、(お好)みやき県代表豚pay高校カルピッス乳、はわて県代表盛り盛り大付属高校のいしだ越星。両投手の息詰まる投げ合い。マウンド上のいしだ投手。ここまでノーヒットピッチング。味方のエラーでこの試合初めてランナーを背負っての投球。いやあ、手に汗握りますね、中野さん」 「カルピッスくんはもちろん、いしだくん、素晴らしいですね。上背は無いんですが、棒立ちの様な独特のフォームでMAX150km/hですから、相当スナップが強いんでしょうね」 「さあそして、先程まで降っていた雨はこの激闘に水を差すまいとする様に止みました。甲子園、上空にはカモメが気持ち良さそうに浜風に乗っています」 「おっと、一球牽制。ランナーギリギリ戻りました。危なかったですね、中野さん」 「矢の様な牽制、やはりスナップが強いんでしょうね」  越星は気になっていた。雨が上がってしまった事だ。頭上にカモメ。きっと来る。バッターは全然タイミング合ってない。そうだ。追い越すまで。全力で投げ込むしかない。唸れ、俺のスナップ。 「さあいしだ、振りかぶらない独特なフォームで、運命の一球、投げました。ズドンと決まって空振り三振!延長せぇーえんっ!!いやあ中野さん、あの振りかぶらないフォームからまた150km/h。なかなかバッターはタイミング合いませんねえ。振りかぶらないけど皮は被ってるんでしょうかね?」 「それはわかりませ、ん?」 「あーっ、キャッチャーボールを落としている!ベンチからの声で気付いたバッター剛田くん、1塁へ走ります!キャッチャー高くん、ボールが手に付かない。やっと握って2塁送球、あっ!高あーい!高くんの送球は必死に伸びあがるセカンド野比くんの遥か頭上、センターへ転々、センター出木杉くん良く見ていた!素早いカバー、あーっ!出木杉くんもボールが手に付かないぞ?!その間にランナー中野くんホームイーンッ、サヨナラーッ!!なんという幕切れ、がっくり膝を付く盛り盛りナイン、トンペイ地方対決はカルピッス擁する豚pay高校に軍配が上がりました!!全員3年生、いしだ越星と盛り盛り大付の最後の夏は終わってしまいました!ちなみにランナーの中野くんはサンプラザ。解説の中野さんはアデランス。なんという運命のいたズラ。中野さんっ!」 「ズラ言わないで。いやあしかし敗れたとはいえいしだくん、見事なピッチングでした。どうやってあれだけのスナップを鍛えてるんでしょうね?」  越星以外みんな泣いていた。マウンドに駆け寄り打てなかった事、エラーを詫びるナインの肩を叩いた。  投げた瞬間わかった。とびきりデカいカモメの糞を避けられない事を。その瞬間、負けたと思った。ミットに収まった筈の剛速球は、ミットに鳥糞を擦り付けながら回転し、滑ってこぼれ落ちた。その後キャッチャーの高太郎もセンターの出木杉(名字しか知らない)も糞で滑って掴み損ねた。誰のせいでもない。俺のせいだ。2人ともその右手で涙拭う前に手を洗えよ。俺の方こそ悪かった。
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