学園祭当日

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学園祭当日

学園祭当日。 麗美はあまりクラスの手伝いができなかったからという理由で、ずっと縁日の当番をさせられていた。 本人も自ら「申し訳ないから私が当番やります」と係を買って出た。その辺彼女は男気がある。 文化祭の手伝いをしなかったと女子から嫌味を言われるのは分かっている。だから面倒だけど麗美はやるらしい。というか、ことを荒立てたくないんだろう。 うちの学校は進学校だから塾で早く帰ってしまう子も多かった。 特に問題はないかと思うけど、麗美の場合は何かと目を付けられる。 可愛らしい見た目が、嫌がらせのターゲットになるのは世の常だ。彼女のおとなしく控えめな性格も、かえって女子から反感を買ってしまう。 馬鹿らしいけど世間はそういうもの。 その辺、上手く立ち回らなければならないということも、麗美は賢いからわかっている。 「じゃ、巡回してくる。なんか欲しいものあったら買っとくよ」 私が一緒にいると麗美が気を遣うから、そう告げて教室を出た。 その辺のグループに混ざり適当に時間を潰す。 体育倉庫の前でラグビー部が女装して踊っていた。 人気なのか、たくさんの観客がいた。 女子高生たちの前で、ミニスカートの男たちが足を上げて流行りのダンスを踊っていた。 なんとなく門脇君を探すと、ひとりだけ何故かゴリラの着ぐるみで、首から『イケメン』と書いた札を下げて踊らされていた。 女子がゴリラに一緒に写真を撮って欲しいと列をなしている。 「ゴリラ、人気なのね。すごく暑そう」 「写真撮る?」 「いや、並んでまではいらないかな」 クラスメートの山田さん達とそこを後にした。 「そう言えば、明里。ひったくり犯を門脇君と一緒に捕まえたんだよね」 山田さんがが聞いてきた。 「そうだよ」 捕まえてはいないが、何度も聞かれてうんざりだったので適当に答えた。 「あれから門脇君、人気が出て他校から会いに来る生徒とかもいるみたい」 さっきのゴリラとのツーショット写真も、その影響なのだろう。 「へー凄いね。私には誰も会いにこなかったけど」 そう言うと、みんな笑っていた。 明里も実は、あの後何回か声をかけられた。ひったくり犯の事件のあの人ですよね?みたいな。陸上部に入らないかとも言われた。 他校の女の子に『走る姿がかっこよかったです』と連絡先を聞かれたこともあった。 知らない人なのでごめんなさいと連絡先は教えなかった。 出店でたこ焼きを売っていたので麗美の分も買った。 タピオカミルクティーは、余ったからといってもらった。 明里はたこ焼きを手土産にクラスに戻る。 麗美はお客さんがいなくなった教室で、後片付けをしていた。 三時だから、もうそろそろクラスの出し物は終わる。 「わぁ、たこ焼きだ。ありがとう!」 麗美はたこ焼きを喜んでくれた。 「一人?」 「うん」 「そか、一緒に食べよ」 「うん」 二人で窓側の席に座ってたこ焼きを食べた。 「凄く外暑かったよ」 「外の出し物にしなくてよかったね」 ある意味、教室にずっといる方が良かったのかもしれないと思った。
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