旅路

2/2
前へ
/29ページ
次へ
門脇君は羽田までついてきた。 お互いひと言も話さなかった。 明里のリュックの中には二泊三日分の着替えと、『おじいちゃん』が入っていた。 明里はこっそりお墓に納骨する前に骨壷からおじいちゃんの遺骨を少し、ビニール袋に入れて持ってきたのだ。 今回の北海道行きはおじいちゃんを故郷の海に還すことが目的だった。 空港には何度か来たことがあるが、いつも親と一緒だった。しかも最後に来たのは小学校二年生の頃で、記憶にはほとんど残っていない。 ちゃんと搭乗できるだろうか、緊張する。 とにかくチェックインを済ませなければいけない。明里はドキドキしながら予約した飛行機の便を掲示板で確認した。そこにチェックインカウンターの番号が書いてあった。カウンターに行けばいいらしい。 門脇君の姿がいつの間にか消えていた。 空港で引き返したようだった。 まさか本当に飛行機には乗らないだろうとは思っていた。 帰ってくれて良かったと明里はほっとした。 家族や友人が一緒にいないと、簡単に迷子にはなれない。自分でちゃんとカウンターカウンター場所を確認しなくては。 広い空港は未知の世界だった。 『初めての飛行機の乗り方』を検索しておいて良かった。明里はスマホで調べれば何でも分かるこの時代に感謝した。 荷物は預けたし、あとは航空会社のスタッフの指示に従ったらいいだけ、簡単だった。 かなり早めに到着したので空港を見学することができる。飛行機が飛び立つところが見えるらしいので明里はいろいろ見て回ることにした。 第二ターミナル 五階、展望デッキからは東京湾を目の前にして、東京ベイエリアから千葉湾岸エリアが見えた。眼下には主要滑走路があり、離発着する飛行機もダイナミックに見学できた。 せっかく空港まで来たんだから、門脇君も飛行機を見てから帰ったら良かったかもと感じた。声を掛けなかった事を少し後悔した。 時間がきたので明里は飛行機に乗り込んで着席した。 やっと緊張が解けて一息つくと急激に眠たくなった。 明里はそっと目を閉じた。 さよなら本土。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加