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札幌市内は凄かった。
「うわっ……めちゃ都会」
門脇君は辺りを見回しながら「スゲー」とかずっといってる。
明里もすごい都会だなと思った。
明里は今まで札幌で観光をしたことがなかった。
おじいちゃんが住んでいたのは紋別だ。流氷の世界だ。明里は紋別に行く予定だ。
冬場はほとんど雪に覆われていて、二月には最低気温マイナス三十六度とかの記録出しちゃうくらい寒い紋別。札幌の比じゃない。
だから門脇君は、今のジャンパー一枚の服装じゃ死ぬだろう。
「どこに行く?とりあえず、時計台とか?」
門脇君はどこで取ってきたのか、観光マップを手にして楽しそうだ。
「すすきの」
「え?すすきの?すすきのってすすきの?大人の町?」
すすきのは大人の歓楽街のイメージがあるけど、けしてそうではない。
買物するお店もあるし、お洒落なカフェやおいしいレストランもあるという。
賑やかな繁華街情報サイトをみて、明里はここに泊まるホテルを予約した。
ちょっと高校生にはハードルが高いかと思ったけど、見た目は大人だから問題ない。
誰にも文句は言わせない。
明里は門脇君の前に立った。
明里は百七十センチ身長があるが門脇君は百八十は越えてるだろう。デカい。
仰け反る形になりながら、顔を見上げた。
「まず、門脇君が行きたい場所に行けるよう善処します。けれどその前に買い物が先。明日紋別に行くのオホーツク、流氷で有名なとこ。そこはマイナス三十度超えるくらい、ひょう、ひょう、氷点下」
「お、おう」
「嫌かもしれないけど、古着で防寒着を揃える。予算五千円以内」
明里は『嫌とは言わせないぞ』という雰囲気で門脇君に伝えた。
マイナス三十度超えるは流石に言い過ぎだけど。
「ああ、……えっと。わかった」
「それと、私も札幌は幼いころ来たことあるけど、記憶がないから初めても同然。何か聞かれてもわからないから」
え、マジで?と門脇君は少し驚いたようだった。
「友達がいるとか、親戚が住んでるとかじゃないの?」
大通り公園は雪まつりの準備なのか石像が製作途中だった。まだ完成していないけどかなり迫力があった。ゆっくり見学したいけど、そこは通り過ぎてすすきのを目指す。
比較的安くて、きれいで、洋服がいいっぱいあって、全国展開しているリサイクルショップに門脇君と入った。
ブランドにこだわらなければ、リュックやヤッケが千円とかで売っている。しかもセール中で半額になっていた。
その場でタグを全部切ってもらってすぐに着ますと言ってリュックにすべて詰め込んだ。
「意外とお洒落に揃ったからびっくりだわ」
予算内とはいかなかったけど、寒さをしのぐには十分な装備が整った。
「俺、このアウター嫌なんだけど、ダサくね?」
「知り合いに遭遇しないし、いいんじゃない?逆に誰もが知ってるブランドの方がダサいよ」
「でもさ、プーマじゃなくてフーマって書いてる。PがFになってるぞ」
あ、ホントだ。と明里も買ってから思ったけど、自分が着るわけではないのでいいやと思った。
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