最後の夜

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おはよう除雪! 窓の外には海が見える。 そして道路に積もった雪を除雪車が処理しているのが見えた。 除雪車は深夜から早朝にかけて作業しているようだ。雪国ならではの光景だと思った。 「おはよう」 門脇君がまだ眠そうな顔で明里に挨拶した。 「おはよう。朝から除雪車の音で目が覚めるのも、雪国ならではだよね」 なんだそれ?と門脇君は笑った。 元気な明里の様子に安心したようだった。 朝も二人で温泉に入ってから、着替えて朝食バイキングへ行く。 これが種類豊富でおいしい! こんなに豪華にして、ホテルの経営は大丈夫なのかと心配してしまうほどのホタテだった。 「昨日あんなに食ったのに、朝から飯三杯はいける」 「目の前でシェフがオムレツを焼いてくれたよ。凄い贅沢だよね」 子供のようにはしゃいでしまった。 旅の恥は掻き捨てともいうので問題ないだろう。 とはいえ年齢的に自分たちはまだ子供。 親はまさか男の子と一緒に旅行に来ているとは思ってないだろう。 明里は、大人になった気分でいた。 自分の好きなように、自分で決めて行動した。 今まで親の管理の下、窮屈な中でしか生きられない子供から抜け出した気がした。 その達成感に心が躍る。 その後ホテルをチェックアウトして、昨日行けなかった流氷科学センターへ行った。そして流氷ワールド体感した。 寝ても覚めても流氷だ。 けど、これがなかなか面白かった。 この水槽には、紋別の海から採取された『天使クリオネ』が五百匹も泳いでいる。羽をはばたかせるように泳ぐ様子はキュートだった。 厳寒体験室で マイナス二十度の世界を体感した。濡れたタオルをぐるぐる振り回すとあっと、いう間にタオルがカチカチに凍りついた。 凍ったシャボン玉は、掌に載せることもできる。 まるで校外学習のように楽しんだ。 本物の流氷とシロクマやアザラシの剥製が展示されたスペース。 氷漬けにされた魚の展示は「なんだこれ?」と笑ってしまうような驚きがあった。一種類ずつ個別の氷のなかに魚が展示されている。 水槽代わりの氷はまるでクリスタルのように透明で芸術的な仕上がり。 でも魚はみんな死んでいるというシュールさ。 オホーツクタワーやアザラシランドも勢いに任せて観光した。 バスで約十分ほどの距離に、紋別空港がある。 羽田直通便が出ている。いわゆる紋別タッチで有名な空港だ。 明里たちはギリギリまで紋別を楽しんだ。 「流氷観測レーダー展示スペースが良かった。また夏になったら紋別へ来たい」 「……だね……」 帰りの飛行機で門脇君の話を聞きながら、明里はいつの間にか眠ってしまった。
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