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日直が一緒になって、門脇君が話しかけてきた。 そういえば、ひったくり事件以来、彼と話をしていなかった。 「あれから、どう?SNSで晒されたから周り煩くなかった?」 「そうだね。今は落ち着いたかな。近所のおばちゃんに褒められた」 門脇君は俺も似たようなもんだったと笑った。 笑うと結構可愛らしい顔になるなと思った。 門脇君はイケメンだけど強面(こわもて)だから、慣れないと話しづらいイメージだった。 いつも笑ってたらいいのにと思った。 「陸上やってたんだよな?」 「うん。中学までは陸部だった。今は受験のために帰宅部」 「ああ。頭いいもんな伊藤」 確かに私は頭がいい。麗美には負けるけどクラスでは上位だ。 「そんなことないよとは言わない。門脇君赤点取ってたもんね数学」 「マジか。知ってんのかよ。だが、あれから俺は数学に目覚めたから今は勉強してる」 ハハハと笑って日誌を書き終えた。 「あのさ、うち酒屋なんだけど、福引の景品で映画のチケットがあるんだ。良かったら一緒に行かない?」 「……なんで?」 「え……」 なんで私が門脇君と映画に行かなければならないのだろう。 確か、テニス部の後輩と付き合っていたんじゃなかったのかな。 「あ、もしかしてスプラッター物とか?ホラー?」 オカルトや超自然現象物かな。彼女は苦手なのかもしれない。 「いや、アクションだけど、人気あるやつらしいから」 「そうなんだ。それなら佐々木君誘いなよ。男の人そういうの好きでしょ?」 「ああ。そうだよな」 「でも、誘ってくれてありがとう」 一応お礼は言っておいた。 アクションも苦手な彼女なのかもしれない。 「この間のひったくり犯は伊藤がいなければ逃げ切れなかったし、あの時の礼もしたい。俺は伊藤さんと行きたいんだけど。伊藤さんが良ければだけど」 ああ。そういう事か。 けど、女子高生あるあるだけど、話をしただけで、彼氏取ったと疑われたりするこのご時世。 それは嫌だし、何より面倒だ。変な誤解を招くような行動は慎みたい。 「私は良くないかな。時間がないんだよね。ごめんね」 ガタンと机にわざとらしくつっぷして、ショックを表している門脇君。 「お互い様だし。お礼とか、必要なくない?」 「まぁ、そうなんだけど」 「気を遣ってもらってありがとう。アクション楽しんできてね」 佐々木君はアクション映画が好きそうだと思う。 「……俺が嫌いとか、キモいとかそういうんじゃないよな?」 「……なんで?」
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