学園祭の準備

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学園祭の準備

高校の学園祭は、各クラスが出し物や劇出店などをやる。 毎年のことだけど、この時ばかりは、クラスみんなが協力し合い絆を深めなければならない。 明里のクラスは縁日をやるらしい。 射的やダーツ、ボールプール宝探し、モグラたたき、輪投げ、ミニボーリング……色んな案が出された。 明里は、ミニボーリング係になった。 佐々木君も一緒だった。 ボーリングのピンと玉は、安いお店でおもちゃの物を買ってきた。 後はダンボールでレーンを作るだけだ。 明里はダンボールにカッターナイフで線を付けて、そこを折り曲げていった。 「明里けっこう器用だな」 「こういうの得意かもしれない。ってかいつから明里って呼び捨て?伊藤って言ってなかった?」 「え、じゃぁ、俺の事もケンちゃんって呼んでいいぞ」 佐々木君は手を動かすより口のほうがはるかに動いている。 「断る」 返事早すぎ。と言って佐々木君が笑った。 「俺が折り曲げていくから、明里がカッターで線付けてってよ。ってかなんで俺らボーリング係は二人だけなの?」 「ボーリングは、景品もボーリングの玉も買った物なので、仕事が楽だという理由で二人なんだって」 「んじゃ、打ち上げとかも二人で行くの?」 「なんで私が佐々木と二人で行かねばならぬ」 「照れんなよ」 痛い! と思ったらカッターで手を切ってしまっていた。おしゃべりばかりしていたから注意していなかったと明里は反省する。 佐々木君は明里が怪我をした事に気が付いてないようだった。 たいして深く切ったわけではなかったので、絆創膏貼っとけばいいかと手洗いに向かった。 「どしたの?」 お手洗いに行ってくると佐々木君に言って立ち上がった。 「伊藤、手、怪我しただろ。ちょっと見せて」 何も言ってないのに、奥にいた門脇君が走ってきた。 明里の手を取ると、傷口を見て保健室いくか?と聞いてくれた。 「え!あかりん怪我したの?」 佐々木君も明里の所に来て傷口を見た。いつの間にかあかりん呼びになっている。 「健、お前がカッター係やれよ、女子にやらせるなよ、危ないだろ!」 門脇君は佐々木君にそう言うと、明里の腕を引いて保健室へ連れて行ってくれた。 「大丈夫、私がどんくさかっただけだから」 保健室くらい自分で行ける。 遠慮したけど、無言でどんどん歩いていくから仕方なく従う事にした。 「女なんだから傷が残ったら駄目だろう」 「……指だし別に」 女扱いされたことに驚いた。 なんだか少し照れくさい気がした。
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