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1.バイト中の出会い
「お疲れ様でしたぁ!」
清掃のバイトを終えた真仲翔真(まなか しょうま)は帰路についていた。
と、思いきや。
数分後。
次のバイトに行く。
「おはようございます! お疲れ様でーす!」
そう。
翔真は複数のバイトをハシゴするパラレルワーカーであった。
ダンジョンが無数にあるこの世界では、ダンジョン産の鉱石や魔石をギルドに収める事で生計を立てている者が多い。
そんななか清掃や配送の仕事をしているのは、テイマーという世界で最弱と言われる天職になった為である。
「おう! 翔真! 今日はこの荷物を森をぬけた先の椎和町(しいわまち)に届けてくれるか?」
「はい! わかりやしたぁ!」
ステータスが低い翔真でも、何とか持てる重さの荷物を配達する。
「はぁぁぁ。金持ちになりてぇなぁ。金があれば何もしないで暮らせるのになぁ」
汗をかきながら森を抜けようとした時であった。
『ウゥゥゥゥゥ』
何やら声がする。
声のする方へ行ってみる。
『ウウゥゥゥゥゥゥ』
不自然に地面が盛り上がっているところがある。
「おい! 大丈夫か!?」
地面の盛り上がっているところを叩いてみる。
『ウガッ!? ウゴゴッ!?』
起き上がったのは3メートルはありそうな巨大な魔物であった。
体は木で出来ているようだが、身に纏っているのは魔物の骨のようだ。
「くっ!」
テイムしようと思って色んな魔物に会ったつもりだったが、ここまでのプレッシャーを放つ魔物は見たことがないな。
『ウゴォォォ!?』
ズンズンッと翔真に気付くと腕を振りかぶり攻撃してこようとする。
すると翔真は力を抜いて両手を開き待ち構える。
俺には抵抗する力などない。
最弱と言われる天職についた俺はレベルが上がったことも無い。
この世界のテイマーが何故最弱と言われるか。
それは、初期ステータスが低いため魔物をテイムできる可能性が非常に低いということ。
そして、運良くテイムできたとしても魔物が弱い為それ以上強い魔物には、敵わないということ。
おれの人生はここで終わったんだな。
バイトに明け暮れた日々は何気に楽しかったなぁ。
ガシッ
身体を捕まれ足が地面から離れる。
もう片方の魔物の手が伸びてきて目の前まで来る。
ギュッと目を瞑って死を覚悟した。
ナデナデ
何故か頭を撫でられている。
『ウゴッウゴッ』
うん?これは、逆に懐かれたのか?
「なぁ、俺のパートナーになってくれるか?」
『ウゴッ!』
頷く魔物。
「よっしゃ! テイム!」
翔真から魔力が溢れ魔物と魔力を共有する。
何か力が漲ってくる感覚に襲われていた。
なんだ!? 凄い力が湧いてくる感じがする。
「ステータス!」
――――――――――――
NAME:真仲翔真
LV:1
ATK:2018
VIT:2021
DEF:1256
MND:523
テイム中
NAME:魔物の王
ATK:9999
VIT:9999
DEF:8568
MND:1012
――――――――――――
「な、なんだこれ!? どうなってるんだ!?」
テイム前の数値
――――――――――――
NAME:真仲翔真
LV:1
ATK:18
VIT:21
DEF:19
MND:23
――――――――――――
数値が大幅に増えている。
なんでだ?
テイマーの能力と言えば人魔一体という能力がある。
これは、テイムした魔物と共鳴し自身の能力も上がるというもの。
今までテイムに成功したテイマーは最弱の魔物ばかりテイムしていたので有用性にきづかなかったのだ。
「っていうか、お前魔物の王だったのか!? すげぇじゃん!」
『僕はこの辺の一帯の王だったんだ。配下の魔物は召喚もできるよ?』
「マジ!? っていうか、喋ってる言葉がわかる!?」
『テイムされた影響みたいだよ?』
「話し方がなんかギャップ!」
見た目は恐ろしい形相である。
古の木を身体とし、骨の鎧を纏っている。
顔には骨の仮面を付けている。
『なんか仲良くなれそうだなと思ったんだよね! ずっと1人で寂しかったんだ』
「そうか。俺も2年前に両親が死んでからは一人ぼっちだ。仲良くしような! なんか、ステータスが凄いことになってんだけど」
『やったね! 翔真への影響が大きかったんだね!』
「これ、レベル上がったら凄いことになりそうだな……」
『そうだね! レベルって上がる前の数値の数パーセントのステータスが上がるからね』
「だ、だよな……やべぇ……あっ! 配達しねぇと!」
『配達?』
「あぁ! バイト中だったんだ! 急ごう!」
急ごうと思って踏み込んだ瞬間、景色が変わった。
ドゴォンッ
後ろの方で土が舞い、土煙が上がっている。
「うぉっ! はっはっはぁぁ! すげぇ! 身体能力が上がりまくってるぜぇ!」
ドスッドスッと横を併走してくる魔物。
『ねぇねぇ、僕に名前付けてくれない?』
「あぁ、そうだな! んー。何がいいかなぁ。カッコイイのがいいか?」
『そうだなぁ。なんか渋いのがいいなぁ』
「んー。難しいなぁ…………王だったからなぁ……蘇芳(すおう)ってどう?」
『いいねぇ! 渋いかはわかんないけど、気に入ったよ! ありがとう!』
「おう! あっ! あそこが配達先だ! ちょっと待っててくれ」
『うん』
ガチャ
「ひぃーーー! ま、魔物……」
「あっ、大丈夫です! すみません! 俺のテイムしてる魔物なんで!」
「そ、そうなのね! 凄い強そうな魔物ね! 凄いじゃない!」
「ありがとうございます! では、お届け完了のサインをお願いします!」
サインを貰うと帰路に着く。
「よし、蘇芳! 戻るぞ!」
『うん!』
凄まじいスピードで走る2人。
5キロほどある道のりをおよそ4分ほどで戻っていく。
拠点としている町に戻ってきた翔真は、配達の報告をしに蘇芳と共に配送屋に向かう。
「おかえりー! うわぁぁぁ!」
配送屋の店主が腰を抜かす。
「すみません! たまたま魔物のテイムに成功してしまって……一緒に連れてきちゃいました」
「そ、そうなの……し、翔真くんよく働いてくれるけど、魔物と一緒じゃ働けないよ!」
「えっ!? でも、こいつ何にもしな────」
「と、とにかく! 明日からは来なくていいから!」
「えっ!? そんな!」
「これ、今日までのお給料だから! じゃあね!」
チャリンと置かれたのは少し多めな給料。
バイトを失った翔真は途方に暮れる。
「あーぁ。次のバイトに行くかぁ」
再び清掃のバイトに出社する。
すると、先程の配送屋さんと同じような対応をされ、職を失う。
「はぁぁぁ。どうしよう。生活できなくなっちまう」
『ごめん。翔真。でもさ、翔真はダンジョンとか……行かないの?』
「ダンジョン? ダンジョンってのはさ、強いやつじゃないと生きの……こ……れ…………ない」
目を見開いてしばらく停止する。
「そうじゃん! 蘇芳のおかげで強くなったんじゃねぇかよ! そうだよ! ダンジョン行こう!」
『うん! 2人で十分だよ! ダンジョンを攻略しまくろう!』
「いよっしゃあ! 一獲千金! ダンジョンコア取って稼ぐぞぉぉぉ!」
強くなったことを忘れていた翔真はダンジョンに入って稼ぐことに決めた。
この世界のダンジョンとは、無数にあり、どんどん成長していくと言われている。
最奥にあるダンジョンコアや途中にある鉱石などを求めて皆潜っている。
ダンジョンコアは失われるとそのダンジョンは自然消滅するが何時しかまたどこかに現れるのだ。
コアは魔道具と呼ばれるコアを使った道具に使われ、大ダンジョンと言われる100層を越えるダンジョンには巨大なダンジョンコアが発見されるという。
巨大なダンジョンコアは小国の国家予算並みの金額で取引され、国を守る為の守護魔法等の使用に用いられる。
一攫千金といわれるダンジョンコアを求めて翔真と蘇芳の無双劇が始まる。
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