IV

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 何度か誘われるディラン様と二人きりのお茶の時間を愛想笑いで過ごす以外、私の暮らしは快適そのものと言えたでしょう。  私はプレゼントに添えられたメッセージカードを受け取りました。 《ジールヴェーの国に君が早く心地よさを感じてくれますように》 (ディラン様とはあまり話したくない)  彼もまた、良い人であるらしいということを私は理解しつつありました。憐れみや同情などからではなく、単に自分の伴侶となった相手には誠実に優しく接しようとしているのが嫌でもわかってしまったのです。 (私は復讐のためにこの国に来ているのに)  困惑。そして苦痛が胸を締め付けます。  彼は母を殺した相手だと聞いているのに、とてもそうには見えないのです。母を殺しておいて私にこのような態度をとっているのであれば、サイコパスかなにかなのでしょうか。  《この一年、心を開いてはならない》  うっかり親しくしてしまわないよう、私は優しくされる度にお父様の言葉をよくよく思い出さなければなりませんでした。 「あ、あの、王太子妃様。今日は宮廷魔術師様がお目通りを願っています」 「宮廷魔術師?」
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