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その通り、でした。
よって、自国では海のような水溜りすら作り出すことの出来る強大な魔法を扱える兄も、地面を破ることも出来る父も、その力でここジールヴェーを攻めることは出来ないのです。
「王太子妃サマには、是非ワタシの協力者となってこの魔法紋の開発に力を貸して欲しいのです」
「最初の質問に戻ります。なぜ、私が?」
この研究は使い方によっては軍事にも転用できる研究です。
現状、ジールヴェー国の力になるような協力を私はしたいとは思えませんでした。
しかし、マローはにっこりと笑っています。まるで私が断ることなど考えてはいないようでした。
「王太子妃サマは叛意がないことをどう証明するつもりですか?」
「叛意?」
「マギカマズルの東端はつい最近までジールヴェーと西端と交戦していました。ジールヴェーの西はほぼほぼ独立した自治区となっていて、この都出身の者はあなたに敵愾心のない者が多いでしょう。しかし、西出身の者はマギカマズルに良い感情を持っている者は少ない」
「!」
それは尤もな指摘でした。私がジールヴェーの民に抱く感情は、ジールヴェーの民から私に向けられてもおかしくはないのです。
そして、侍女達があまりにも私に優しい理由も少しだけわかりました。私にとってはジールヴェーは敵国という認知ばかりなのですが、彼女達にとって私は殆ど知らない国から一人でやってきたお姫様なのです。
敵という認識を持っていのは私だけ。
けれど、その認識もいつひっくり返るかわかりません。
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