V

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 この国で初めての規模の風魔法。きっと一人ではこの境地に辿り着けはしなかったでしょう。幾度となく二人で「魔法とは何であるか」、情報を出し、検討し合った結果でした。  マローは少し乱れてしまった自身の髪の毛を整えました。艶のある髪の毛が陽に照らされます。 「王太子妃サマは大変努力家で助かります」 「私も宮廷魔術師が有能で助かるわ」  マローは冷静に、そして優雅に跪きました。  それはこれまでの少し私の値踏みをするのとは違う態度です。 「他人行儀な呼び方はおやめください。どうかマローと」 「私もシラティスで良いわ」  私は手を差し出してマローを立たせました。黒い手袋に覆われた手はお兄様のものよりも大きく、ガッチリしていて、お父様を彷彿とさせました。 (この男は役に立ちます)  この一ヶ月でマローは私にジールヴェー国での振る舞い方や情報を教えてくれました。良くしてくれるだけではなく、味方になって導いてくれる存在は私にとって貴重でした。  そして何よりも、この魔素の少ない中で魔法を発動させる技術は、完成すれば私達一族の復讐にも応用出来ると思いました。 (この技術を持って帰れば、必ずお父様の役に立ちます)  あくまでも、復讐のために。  私はマローと良い関係を築きたいのです。 「!」  私は辺りを見回します。 「おや、今日もまた視線を感じますか?」 「......えぇ、そうですね」  今日もザワつく視線を感じました。  風の魔法を使った後などに、時折誰かに見られているような感覚がするのです。
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