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「マロー様、精霊かもしれまセン」 「エルガリア、シラティス様はマギカマズルの出身ですよ」 「えぇ、でも。そうとシカ思えません」  カタコトの言葉で話し出したのは、マローの付き人であるエルガリアでした。  エルガリアは褐色の肌に尖り掛けた耳を持つ少数部族の娘だそうです。最近、歳は私と同じ13歳だと聞きました。  マローは庭のベンチに私を誘導していつものように私に雑談を始めました。 「シラティス様はジールヴェーの精霊についてどのぐらいご存知ですか?」 「精霊が、きっと居るのだなぁ、ぐらいです」  “13歳にしては頑張りました”、と褒めているのかいないのかわからない言葉をマローは言いました。不敬です。  精霊はマギカマズル国には居ない存在です。この国の人々はことあるごとに《精霊の祝福がありますように》と言葉にしますが、その実態はよくわからないままでした。 「仰る通り、ジールヴェーには数多の精霊が暮らしています。基本的に人前には姿を現しませんが、ときに気まぐれで光や声でその存在を見せると言われています」 「光......?」  ふと、私は病に臥せっている陛下のところで見た光を思い出しました。もしかすると、あれは精霊だったのかもしれません。 「えぇ。そして精霊はジールヴェーの民に”一生に一度だけ”願いを叶えてくれます。精霊によって力はまちまちなため、どのくらいの願いを叶えてくれるのかは精霊によりますが、一生に一度だけ願いを叶えてくれるのです」  “ジールヴェーの民に”と敢えて限定したのは、南のナカマ国や帝国から来た人で精霊が見えた人の話は聞いたことがないそうです。
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