VI

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 私は”一生に一度のお願い”の存在を聞いて、思いついたことをディランに問うことにしました。今、ジールヴェー国として最もあったら嬉しいこと、はこれなのではないかと。 「もし、今もう一度使えたら、陛下の病を治してもらいますか?」  ジールヴェー国王の病を治す。  それはきっと、マギカマズル国にとって都合の悪いことの一つで、ジールヴェー国にとっては喉から手が出るほどに欲しいことです。 (マローから聞きました。陛下は皆から慕われていて、賢君であったと)  陛下が病床に居なければ、マギカマズル国ともうまくやっていたかもしれないそうです。西の自治区を抑え込む力がなくなったのは、陛下が表舞台に立たなくなり辺境地まで威厳が保てなかったことも一因だと聞きました。 (今はディランが政務を担当しているけれど、貴族相手などで押し負けることもあると聞いたわ)  ディランは少し悩んでこう言いました。 「そうだね、治したい。陛下は国王だけど、僕にも姉上にもよくしてくれた父親だから」 「良いお父様だったのですね」  少しだけ、私のお父様を思い出しました。  王族である私達にとって、父親は民を統べる王であり、国を背負う代表者です。大波から守ってくれる防波堤のようなもので、父親が存在しているだけで、まだ自分たちの代ではないことに安心が出来ていました。 「精霊女王については聞いたかい?」 「精霊女王?」  私は首を振ります。 「精霊女王は全ての精霊を統べる女王様なんだ。彼女に気に入られれば、色んな精霊を動かしてどんな願いだって叶えてくれるらしい。でも、この200年、姿を見た者は居ないとされている。もう消えてしまったとか、この国から出て行ってしまったとか、そういう話があるんだ」 「もしかして、探しに行かれたことがあるのですか?」  ディランは頷きます。 「アリシア姉上とね。姉上がシラティスと入れ替わりにマギカマズルに嫁ぐ前だ。アリシア姉上は陛下のことをとても心配していたよ。精霊が沢山居ると言われる場所を何箇所も巡ったけれど、願いを叶えてはもらえなかった」 「精霊女王の居場所がわかれば......」  私は話を聞いている内にディランの力になりたいと思ってしまいそうになるのを自覚していました。陛下のことを想う気持ちは、きっと私の家族が母を想う気持ちと一緒なのです。 (駄目......)  ディランは良い人でした。  家族の為に自ら動ける、良い人です。 (きっと、複雑な事情がなければ、私はこの人と恋にーーいえ、そんな甘い幻想が存在する訳もないのに)  そのとき、お茶会をしている周りでまた光を見ました。今度は一つではなく複数の光です。着いてきなさいと言わんばかりに私の周りをまわったかと思えば、チカチカと光を点滅させながら飛んでいきます。 《.......いたい?》 「え? 待って!」 「シラティス!?」
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