VII

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《すごいすごい》 《懐かしい力だ》 《おかえり、おかえり》  きっとこれは精霊達の声でしょう。  精霊達は満足したかのように飛ぶと、陛下の周りを光で包み込みました。眩い光、温かい光です。 「な、なんだコレは!」 「シラティス、何をーー」 *  その瞬間、映像が頭を掠めました。  人間ーーとある若い男の願いを精霊ーーおそらく話に聞いた精霊女王が叶えている図です。男が何かを口にすると、精霊女王はその陶器のような肌からぽろぽろと涙を流しました。 (あぁ、好きだったのですね)  きっと、これは愛なのだと思いました。  2人はもう二度と離れないと言わんばかりに固く抱き合いました。  しかし、2人の恋はーー祝福されなくてーー。 * 「シラティス! シラティス! しっかりして!」  ディランが私の肩を揺さぶっています。 (今のはーー?)  私は現実に引き戻されました。混乱して辺りを見回すと、ディラン以外の人々が私を警戒したような目で見ているのです。 「ディラン様、怪しいですよ」 「陛下の身に何かあったら困ります!」 (しまった......)  《他国から来たスパイだと思われますよ》  先日のマローの言葉が思い出されます。  ディランが私を守るように立ち、緊張が走ります。 「シラティスは何か考えがあったんだよね」 「え、えぇ」  もしかすると、私のジールヴェー国生活はここで終わりかもしれません。  しかし、そのとき。  ゆっくりと、陛下が目を覚ましたのです。 「ふぁ〜ぁ。よく寝たわい」  元気に満ち溢れた姿で。
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