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しかし、風の月のある日。
異変が起こりました。
朝から皆の態度が急に変わったのです。
「ねぇ、どうしたの?」
「お答えできません」
「今は自室にお戻りください」
「お食事はこちらの量で」
誰かにモノを聞いても知らない、答えられないの一点張り。食事は朝から質素なものばかりになり、量も殆どありません。部屋からはなるだけ出るなと言われます。
私と目を合わせるとニコニコと微笑んでいた者も私を見ると目を逸らし、どこかへそそくさと消えていきます。
私はーー納得していました。
(そうです。本来であればこのような態度を取られるべきなのです)
私は態度に出さないようにしながら、安堵していました。良くしてくれる人々への裏切りを心に秘めたまま甘やかされることに心が軋み始めていたのです。
このまま皆が私を見限り、居ないものとして残りの数ヶ月を過ごさせて欲しいと思いました。
*
自室には王城の図書館から取り寄せた精霊の本が沢山置いてあります。
(ありました。精霊女王に関する記述です)
私の周りの精霊達はポツポツと言葉を掛けてくれますが、その中でも一番多いのは”精霊女王”という単語でした。
(知らなきゃ......)
精霊達はまだ私の近くに居て、風の魔法を使うときになどに力を貸してくれます。マローやエルガリアにはその様子は見えておらず、私がメキメキと実力をつけているように見えるでしょう。
(”精霊女王には数多の精霊が力を貸し、従う”ーーやっぱり、それ以上のことはよくわからないわ)
もしかしたら、精霊達には私が精霊女王だと勘違いされているのかもしれない。そんな風なことを考えることがありました。
(いいえ、私はマギカマズルの民。そんなことはあり得ないはずなのに)
マローから聞いた話では外の国からやって来たもので精霊は見えないとのことでした。とすれば、マギカマズル国という国は実はーー。
「!?」
突然、目の前が暗くなりました。
しかも、手足が動かせないように何かで固定されています。
(縛られてる!?)
「シラティス、ごめん」
耳元で囁いた声は、聞き慣れたディランのものでした。担ぐようにして私を抱き上げると、どこかへと運んでいるようです。
(どうして......? 何......?)
急に恐ろしくなりました。
私はどうして自分の身が安全だと思い込んでいたのでしょう。私はジールヴェーに和平のためにやって来ただけで、いつでも切り捨てられる存在なのに。
(私がジールヴェーに復讐を考えていることがバレてーー!? お兄様! お父様!)
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