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XI
答えが出せないまま、二回目の水の月を迎えました。
お父様が迎えにいくと言った一年が経ったのです。しかし、結論から言うと、お父様は迎えには来てくれませんでした。
「マギカマズルとの国境に大きな氷柱があって誰も行き来できないんだ」
水の月は穏やかな気候の筈ですが、稀に寒さが広まり、氷の月と呼ばれることがあります。それでも、今年ほど凍てつくような寒さは初めてで、誰一人として山岳地帯を越えることはできないだろうということでした。
(ホッとしている、私が居ます)
かつてお母様が居た頃は、お母様が行商人達のために火の魔法で氷を溶かしているという話を思い出しました。余りにも強い魔法で、やり過ぎると溶けた水ごと蒸発してしまうこともあったようです。
(お母様はそういえば何故ジールヴェーの国境付近に居たのでしょうか)
お母様は謎多き人でもありました。
マギカマズル国の王妃でありながら単独行動が多く、国土の様々なところに足を運んでいたようです。
そういえば、ディランがお母様を殺したという情報は、お父様から聞いたものです。けれど、当時のディランとお母様の間に何の利害関係もないでしょう。
(もし私がお父様の立場なら、夫が復讐の相手だと吹き込んでこの国で私が誰かを信じさせないようにーー)
私は首を振ります。お父様はそんな非道なことが出来る人ではないはずです。
(今度、お父様に会ったら聞いてみましょう)
家族に会ったら、私は復讐をしたいという気持ちを思い出すでしょうか? それともーー。
課題を先延ばしにしたい私の気持ちに呼応するように、氷の月は大寒波を呼び寄せました。
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