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I
王族である私達マギカマズル一族は家族の繋がりをそれはそれは大事にしていました。
魔法を魔術具なしに使えるのは、私達開祖の王の血を引く者だけ。遥か昔には迫害されていた魔術師がこの国の支配層になってから、私達の一族は決して驕らず、肩を寄せ合うように慎ましく過ごしておりました。
しかし、半年前、とある事件が起こりました。
王妃であるお母様が、東の国境付近の村で殺されたというのです。東は自然の要所が多く、土地は広くとも殆どが手付かずの山岳地帯です。詳細もわからぬまま、流れるように隣国ジールヴェーとの小競り合いが始まりました。
王妃はマギカマズル歴代最強とも言われた火の魔術師でした。その炎は何もかもを焼き付くし、焦土にすることも出来ると謳われたぐらいです。そのような王妃が何故突然身罷ることになったのかはわかりません。
何人もの精鋭に探させましたが、王妃の遺体は見つかりませんでした。しかし、一族の内に感じる波動ーー火の波動が感じられなくなったことで、私達は王妃の死を感じていました。
小競り合いのことは徐々にマギカマズルの全土で知られるようになってきました。このまま進めばジールヴェーとの全面戦争は避けられないでしょう。
しかし、私達にとっては、そのようなことはどうでも良かったのです。
お母様は王妃である前に、家族から愛される妻であり母でした。私達一家は大いに嘆き、悲しみーーそして復讐を誓っていたからです。
*
「婚姻、ですかーー?」
隣国ジールヴェーとの小競り合いがこう着状態になった頃、私は国王であるお父様に呼び出されました。
「ジールヴェーは必ず潰す。しかし、今は和平をせねばならんのだ」
陛下は私に荘厳な蔦の紋様の入った書簡を手渡します。そこには私の人生を左右する文言が書かれていました。
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