XIII

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「シラティス、キスしたい」  欲望に揺れた目に思わず目を逸らしてしまいました。 「ダ、ダメです」 「やっぱり、祖国に想い人が居るから?」  ディランはずっと、私に想いを伝えながらもどこか不安そうでした。それは私に置いて来た恋人が居ると思っていたかららしいのです。 (だって私は”好き”も伝えてない。キスだって許してはいないのだから)  ずっと、心に復讐が重りのように乗っかっていたからです。でも、今は違う気持ちでした。 「恋人も夫も貴方以外にいません。でも、キスしたら......」 「キスしたら?」 「キスしたら、自分が自分でなくなってしまうような気がして」  ディランは私をキツくキツく抱き締めます。 「そんなの大丈夫なのに。どんなシラティスでも、俺は愛するよ」  私はその言葉を信じて良いのでしょうか?  私はーー。  堪えきれなくなって、私はスルリとディランの腕を抜け、風の魔法で翼を作りました。この三年でマローと研究した成果です。そして私の周りにいた精霊達がコッソリと力を貸してくれたおかげでもあります。 「次に会うときに、キスしましょう。必ず!」
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