XVI

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XVI

 周囲の魔素が、いえ、国中の魔素が消えていく気配がします。きっとジールヴェー国に水となって流れているのでしょう。 「魔法陣を止めてください、お兄様!! ジールヴェーを滅ぼしてはなりません!!」 「なんで? まさかとは思うけど、絆された?」  お兄様の目は冷ややかでした。 「僕はずっとジールヴェーに密偵を放っていたんだ。聞いたよ、ジールヴェーで兵器の開発に携わっていたね。敵国に魔法を教えるなんてどういうこと」 「それはーー私にも事情があってーー」 「シラティス、ライオット。折角再会したというのに何を言い争っているんだ」  お兄様は私だけに聞こえるように耳元で囁きます。 「僕は知ってるんだ。君がお父様の言いつけを破って、王子と仲良くしているのだって。お父様を悲しませたくないから黙っているけれど」 「!」  お兄様は私の罪を全て知っているようです。  私は、確かに言いつけを破ってディランのことを好きになりました。けれどーー。 「あの、お兄様と結婚したアリシア義姉様はどうしていらっしゃるのですか? お手紙では二人仲睦まじく過ごされていると聞きました」 「アレは幽閉してる。手紙は無理やり書かせたものだ。顔すら合わせたことは殆どない」  なんてことでしょう。  国境が閉ざされるまでディランは、”アリシア姉上からの手紙”をとても大事にしていました。月に一通届くソレを読んで、離れた家族に思いを馳せていたというのに。 (皆いい人達なのに......戦争がおかしくさせたのです)  優しいお父様やお兄様に戻ってほしい。  私は切り札を出しました。  これは精霊から聞いたとっておきの情報です。 「お母様がジールヴェーで生きたまま眠っているとしても魔法を止めませんか?」
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