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*  父の元に届いた書簡は、マギカマズル国とジールヴェー国の両方に国境を接する南のナカマ国からのものでした。彼の国は国土こそ小さくとも経済規模の大きな貿易国です。美辞麗句から始まるその書簡を要約すると、このような内容でした。  《極南にある帝国がこの度の二国の抗争を見て侵略を企んでいる。二国が疲弊した折に攻め入る腹づもりだ》  この知らせは、我々にとって脅威でした。侵略した土地を無理やり植民地にし、奴隷を集めることで有名な残虐非道な帝国に蹂躙されれば、民や土地がどうなることでしょうか。  《我が国にとっても、二国が侵略されることは喜ばしくない。是非、和平を取り持つ役をさせて欲しい。二国にはちょうど、妙齢の王子と王女が居る。二国の友好関係を示すため、お互いの王女を互いの国に嫁がせてはどうだろうか》  ナカマ国の提案は妥当なように思えました。  マギカマズル国もジールヴェー国も、どちらかが優位に立っているわけではありません。強固な繋がりを対外的にアピールするならば、このような婚姻をすることがあると歴史の授業で習ったことがありました。 「とはいえ、何故ジールヴェーなんぞにシラティスを......」  父はこれが必要なことだと知りながらも、納得いかないようでした。当然です。滅ぼしたい程に憎んでいる国に娘を差し出し、一方で向こうの王族を一族に迎えなければならないのですから。 「いいえ、陛下。私は魔法を司るマギカマズルの第一王女にして、風の魔法の使い手です。必ずや国のために力になりましょう」  私はとうの昔に覚悟を決めています。  王女として生を受けた以上、親元を離れどこかへ嫁ぐことは覚悟の上でした。 「一年だ。一年だけ待ちなさい。必ず迎えに行く。それまで決して、誰にも心を開いてはならない」
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