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【終】
すっかり水が蒸発したジールヴェー国では、また妙な宴が開かれていました。
今日は国賓としてマギカマズルの人々を招きながら。行き違いがあれど、精霊の力で二国の間に死者や怪我人はなかったため、今度こそ本当の和平をすることとなりました。
水や土での被害は精霊達の力で直され、見た目は前と変わらないまでになりました。それもこれも、歴代最強と謳われた火の魔術師である母と新しい精霊女王のおかげです。
「新しい精霊女王シラティスよ、ありがとう」
ジールヴェー陛下が私に挨拶をしました。
そう、精霊に力を認められた私が、次代の精霊女王になったのです。
「シラティス、すまなかった」
「ごめんね」
お父様やお兄様も反省しているようです。私は二人の頭を撫で撫でして許してあげることにしました。
そして、初めて会うこの方とも、私は仲良くしたいと思うのです。
「シラティス様、この度はありがとうございました」
「アリシア様!」
私は義姉上となったアリシア様と初めて握手をしました。お兄様はあれからアリシア様とやり直すことを決めたようです。
*
ディランと私は、一連の挨拶ののちコッソリと抜け出しました。復興までお互いに忙しく実はまともに話が出来ていなかったのです。
(そういえば、私、ディランとキスをーー)
実は復興作業中も思い出す度に顔が真っ赤になっていたのは秘密です。
「ねぇ、シラティス。あのとき、水の中でキスしてくれた?」
「そう......ですね」
私は顔を逸らします。
「それってもう、俺のことを好きになっても良いってこと?」
「前から、好きだったけど、好きになったらいけないと思ってて......」
私はディランに全てを話しました。
疑っていたこと、好きになってはいけないのに好きになってしまったことーー復讐のこと。
全てを聞いて、ディランは私を抱きしめます。
「気付いてあげられなくてゴメン」
私は黙ってディランを抱きしめ返します。
「水の中だと感覚がわからなかったから、もう一回しよう?」
そう言いながら、ディランは顔を近づけました。
甘くて胸がキュンとする、本物のキスでした。
ーーおわり
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