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III
マギカマズル国とジールヴェー国との間に国交ありませんでした。隣国とはいえ、険しい山岳地帯を越えてまで交易をするメリットが殆どなかったからです。それ故に、王妃は既に身罷っているというのは、この地に着いて初めて聞いたことでした。
そして、もう一つ。ジールヴェーの国王陛下に関してはこの国に来てから何一つ耳にしたことはありませんでした。
(そういえば、結婚式にもいらっしゃらなかった)
マギカマズル国との先の戦いでは、ジールヴェーは蛇のようにしつこく戦ったと聞きました。それ故に国王もまた、狡猾な相手ではないかと私は思っています。
「そんなに緊張しないで」
隣を歩くディランが私の手を飾る花の刺繍のスリーブごしに手を触れようとします。
「大丈夫です」
私はそれを優しく払い除けました。
(覚悟して臨まなければ)
拳を作って、城の奥まった方の荘厳な白い扉を進むと、そこにあったのはジールヴェー国王のーー
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