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【序】
水の月、晴れの日。
今日は二組の花嫁が違う土地で結婚式を執り行います。祝福の声は形だけ。この婚姻が和平のために押し付けられたものであることを知らぬ者はおりませんでした。
《美しきこの日に精霊の加護があらんことを》
伸びやかな歌声に合わせるように、私は赤いカーペットへと踏み出します。様々な事情があろうとも、この国の王族との結婚式ということで、歌い手も会場もそれはそれは見事に設えられていました。
ヴェールの隙間から見える、会場を彩る装花は白と緑。精霊を崇めるこの国での結婚式は、野外の白いテラスで行うのが一般的だそうです。
私をエスコートする隣の男性は見知らぬ人で、背の高い黒髪の長い魔術師だということでした。13歳の私のレースの多いウェディングドレスの歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いてくれます。
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