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初めに描いたフェリチェの頭部に、調査で得られた情報から、断面の想像図を描き足し、メモ書きを添えていく。
されたことはともかくとして、イードの筆記の滑らかさに、フェリチェは思わず見惚れてしまった。
観察記録が、すらすらと文字に起こされ、知識に変わっていくさまを眺めているうち、ある考えが浮かんだフェリチェは耳と尾をぴんと立てさせた。
「そうか、わかったぞ!」
「わあ、びっくりしたぁ」
ソファから体を跳ね起こして、本棚から図鑑を選んでページをめくる。対象物の名称や希少性、特徴、注意点などが一目でわかるのがこの書物の良さだとフェリチェは記憶した。
「決めたぞ、イード。フェリチェも図鑑を作る! 花婿候補の図鑑だ! フェリチェはもっとオスを研究して、図鑑に記す。そして、その中から最高の婿を選ぶんだ!」
「へえ、独創的で面白いね。君のためだけの図鑑だ。夢があっていいんじゃない」
「そうだろう! だからな、イード。フェリチェに字の書き方を教えてくれないか? 読めるけど書けないんだ」
「うんうん、いいよ。ついでに街も案内しようね。財布のことも自警団に相談して……」
「イード……。お前、やっぱりいいオスだったんだな!」
フェリチェは感激して、イードを見直したのだが――。
「じゃあ、尻尾も調べさせてくれる?」
「却下だ」
こうして、フェリチェとイードの奇妙な共同生活が始まりを告げた。
(イラスト/望月涼さまhttps://estar.jp/users/560063686)
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