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しょっぱい失恋
※ ※ ※
街はあっという間に豆粒ほどに小さくなって、里の麓に来たところでフェリチェはようやく地に降ろされた。
「ルタ! なぜ止めた! あのまま剣を握らせてくれていれば、あいつを叩っ斬れたのに!」
「お嬢様が、本気でヤる気だったからに決まってるじゃないですか」
図星を突かれたフェリチェは、わずかに口をつぐんだ。
「人間と揉めるのは勘弁してくださいよ。ただでさえ我らフェネットは、乱獲と迫害で数を減らした一族なんですから。我らを受け入れ、共生の道を歩んでくれたアンシア公国との二百年の絆に、ヒビを入れるのはやめてください」
「それをわたくしに言う? 先にフェネットを裏切り、辱めたのはあの破廉恥男じゃないの!」
「そもそも、あの大馬鹿息子がクズ野郎だと気付いていないのは、お嬢様くらいでしたよ」
「何ですって!」
ルタはやれやれと肩をすくめる。
「だからフェリクス様が俺に被毛を持たせたんですってば」
「だったらどうして、誰もわたくしに教えてくれなかったの? 知っていたら、こんな思いをせずに済んだのに」
「まあ、そのへんのお話もあるでしょうから、フェリクス様のもとへ帰りましょうね」
麓を渡る風に、微かにふくよかな果実の香りを感じて、フェリチェは目の端に涙を滲ませた。
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