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膝から崩れてしまいそうなのに、それすら許されず、奪われた視界の中で耳をまさぐる手は止まらない。
「香りは発汗と関係している? それなら興奮状態が作用して……」
「だっ、誰が興奮しているとっ……!? こんなことで……だ、断じてっ、欲情などするものか!」
「そうは言ってないけどなあ……でも、そうか。分かりやすいね。――チェリは欲情してるのか」
くすくすと耳元に触れた吐息で、また一つ身を震わせたフェリチェから、甘い香りが漂う。
「君は本当に興味深いな」
「イード、どうした。ちょっと変だぞ……。な、なあ……もう実験も終わったろう? そろそろ、本当に離してくれ……」
「俺はまだまだ、チェリのことを知り足りないよ?」
顔が見えないせいで、普段の三割り増しで良い声に聞こえた。危うくときめきかけるも、相手はイードだぞと頭の片隅で冷静なフェリチェが語りかけてくる。
「お、終わりったら終わりだ。離せ……」
「もっと知りたいんだ。教えてよ、チェリ」
一旦は我に返ったものの、耳元でイードが口を開くたびに、フェリチェの理性は腰から砕かれていく。
「も、もうフェリチェにだって秘密はないぞっ。イードを満足させられることなんて何も……」
「耳、目、口、爪、鼻……。調べてないのは――尻尾?」
「ふえっ!?」
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