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やけに危険な気配を感じ取ったフェリチェは、股の間に尾を挟み込む。しかし相手はイード……。探究心と知識欲で生きている男を前に、その程度の抵抗、まったく何の効果もない。
「わざとそうしてる?」
「な、何が……だ?」
「いいよ。どうせ全部見させてもらうつもりだから。さあ、チェリ。脚、どけようか」
いつものイードの香りに包まれているはずなのに、なぜだか急に、嗅いだことのないオスの匂いをフェリチェは感じた。
膝で強引に割って入られ、いよいよ本格的に純潔が危機に曝されていると悟ったフェリチェは度を失う。思わず、アンシア語まで飛び出すほどだ。
『お願い。もうおやめになって。イードさんは好きですけれど、これ以上は好意だけで許すわけにはいきませんの。愛がなくては……』
『――愛してるよ』
突然、思いも寄らない言葉が背筋を突き抜けた。
フェリチェの頬は鴇色に染まり、甘やかな香りがまた一層深まった。
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