イードが変だ!

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 すると、願いが通じたのか、玄関の戸が叩かれた。軽やかなノックと、扉の向こうから太いが温かみのある声が聞こえる。 「見回りで近くまで来たので、ご機嫌伺いに参りました。坊ちゃん、フェリチェ殿ー。いらっしゃいますか?」  藁にもすがる思いで、フェリチェは声を上げた。 「……グンタだっ! ほら、イードっ……グンタが来たぞ!」 「大丈夫だよ、ギュンターだから」 「何がだ!?」  気配はあるのに返事のない主人を、ギュンターが不思議がる様子が表から伝わってくる。 「ほらっ、グンタが心配してるぞっ……出てやらねば……」 『君とこうするために、俺は生き延びてきたんだ』 『イ、イ、イードさんっ! いい加減になさって!』  抱きすくめる腕に力が込もって、ちっとも抜け出せない。程なく、困り果てたフェリチェの背後で、扉が躊躇いがちに開かれた。 「勝手にお邪魔して申し訳ない。坊ちゃん、大事ありませんか――。こ、これはっ……!?」  可哀想に――、ギュンターが目にした光景といったら……。心配ゆえに無礼を承知で侵入したというのに、お仕えする主人はことに及ぶ一歩手前……といったところか。  しかも相手は、いつもギュンターを懐っこい笑顔で迎えてくれる、フェネットの乙女。それは内心では喜ばしいことであったが、驚いたのは娘の格好である。顔に巻かれた布は、どう考えても視界を奪うためのもので、いささか変わった趣向の情事をお楽しみなようにしか見えなかったのだ。
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