恋の裏側

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「ルタが常に目を光らせ、回収に奔走したおかげで、これらは衆目に晒されずに済んだのだ。フェリチェよ。成人したお前が(つがい)を選び、わたしのもとを巣立つ日は、もうすぐそこまで来ているのだろう。お前なら、良い婿を選ぶであろうと信じている、だから口出しはせぬことにした。だがな、誰かを思慕し恋情を抱くとは、時として眼を曇らせてしまう。それを、少々痛い思いをしてでも学んでほしかったのだ」 「よくよくわかりましたわ!」  気色の悪い絵を投げ捨てて、フェリチェは腕を組んだ。 「もう人間の男など信じない! 恋なんて懲り懲りです」 「それは早計だぞ、フェリチェ」  フェリクスはむくれた娘を膝に抱き、噛んで含めるように穏やかに語りかけた。 「我らフェネットは、深く愛し合った(つがい)ほど生まれてくる子も強くなる。お前や、お前の兄弟が優秀なのも、わたしと妻が深い絆で結ばれていたからだ」 「知っています。だからわたくしは、お父様とお母様のような、真実の愛で結ばれた夫婦に憧れているんですもの」 「そうだろう? フェリチェよ、愛の前に種族の違いなど些末なこと。真実の愛を求めるお前が、ただ一度恋に敗れたからといって人間を毛嫌いし、自ら世界を狭めてどうする。それで最良の婿が見つかると思うか?」  フェリチェは目一杯、首を横に振った。 「わかったなら、それでよい。広き世界に生き、唯一無二の(つがい)を見つけるがいい」 「それならば、お父様。お願いがございます!」
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