決意を新たに

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 ※ ※ ※  旅立ちの日、里の者総出で盛大に送り出され、フェリチェとルタはアンシア南方の港を目指した。 「本当に、わたくし一人で行っていいの? ルタもついてこないの?」 「ええ。俺がいたんでは、つい手を出し口を挟みたくなりますからね。それに、ユーバインは獣人に対する差別もなく、治安もいいそうですから。護衛も要らないほどなのでしょう。不安ですか?」 「いいえ、楽しみよ。……だけど、ちょっと寂しい」  ルタとは幼い時からずっと一緒で、姿が見えずともそばに気配があるのが常だった。  ルタの夕焼け色の瞳に、しばらく会えないのだと思うと、フェリチェの胸に迫るものがあった。  ごしごしと目の端を擦って、フェリチェは毅然と胸を張る。 「絶対に、素敵な殿方を連れて帰ってくるから」  するとルタはどこか寂しそうに、くしゃりと笑った。 「元気な姿で帰ってきてくれれば、十分ですってば」
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